評価:★★★★☆ 4.4
【双葉文庫さまより1~2巻発売】両親を事故で失った高坂哲史は、妹とともに、定食屋「てしをや」を継ぐことになる。ところが料理がからきしだったために、てんで役に立たず、妹に罵られてばかり。ふと立ち寄った神社で、「いっそ誰かに体を乗っ取ってもらって、料理を教えてほしい」と愚痴をこぼしたところ、なんと本当に神様が現れて、魂を憑依させられてしまった。魂に料理を教わる代わりに、その魂の望む相手に料理を振舞い、未練を解消してやってほしいということらしい。
母親から息子へ。店主から常連へ。姑から嫁へ、夫から妻へ――。様々な魂とともに料理をつくり、その想いに触れるうちに、哲史は少しずつ、料理への姿勢を変えていく。
話数:全20話
ジャンル:料理モノ
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
その他要素
注意:全年齢対象
この物語には悪役令嬢もステータスオープンで開くウィンドウも出てきません。出てくるのは今は亡きシムラ系カミサマだけです。いわゆるなろう系テンプレを一切無視した、書き手が書きたいものを描いた。そんな作品です。美食物好きの私は「のぶ」系を期待していたのですが、いい意味と悪い意味で裏切られました。とてもハートフルな心温まる物語で幸せな気分に浸れるのですが、心にザクザク来すぎて1話読む毎に悩みシムラに説教されている気分に陥ります。もちろんそれは、それだけこの物語に引き込まれ考えさせられているからでしょう。とはいえこの書き手様、今や知らぬ者はいない。書けば書籍化の売れっ子作家に変態しております。第三形態までは確認できました。本作ではフュージョンという黒熊と白熊が合体する技をゴーストの憑依で使う程度のちゃめっけですが、新しい作品を描くたびに新境地を開かれておられます。あぁ文字数たりねぇ…
未練を残して亡くなった魂が、心残りの相手に振る舞う「最後のご飯」家族やライバルなど、生前の関係が深いほどに喪失感も深まり憔悴する……心が潰れて倒れそうな相手を励ます様に、好物や特別な料理が出される定食屋『てしをや』もう言葉を交わす事はできないけれど、心を伝える事はできるから……一度しか出せない「特別料理」ですが、この定食屋を訪れたお客様は、お腹だけでなく「心」も満たされて帰って行く。会いたくても、二度と会えない故人の料理が励ます気持ちを伝えるから……『てしをや』がもたらす「一夜限りの夢」の様な奇跡に、始めは空元気でも気力を取り戻す人達……そんな「特別なお客様」の姿を見送れば、読み手も一緒に心を癒される気分を味わえると思います。心理描写が秀逸で、油断していると涙が止まらなくなりますが……それでも、ぜひ読んでほしい。そして、ドラマ化・アニメ化してほしい作品です。
神様に死者の魂を憑依させられた主人公が、魂に料理を教わり、その魂の望む相手に料理を振舞うことで未練を解消していくお話です。どの話にも切ないくらいの愛情が込められています。読んでいて、涙腺をやられながら、同時に論理ではなく腑に落ちて学べたことがありました。優しさを注がれて、返したいと思ったときに、その相手がまだ健在である。ごちそうさまの言葉を、涙も交えずに告げることのできる相手がいるのは、実はとってもありがたいことなのですね。また、帰省した時に母や祖母の手料理がやたら美味しく感じるのが不思議だったのですが、味に加えて当時の楽しかったことや、愛情を思い出すからなのだなと、勝手に納得しました。素晴らしい作品をお書きになられた中村先生に感謝申し上げます
ジーンと染みるお話が好きな方に。主人公の哲史は、料理のできないニート(元社畜・休職中)です。妹に頭があがりません。両親の遺した定食屋を妹と一緒に継ぎますが、全く料理ができない上に、食べることや料理に対して軽い考えしか持っていません。そんな哲史に実地で料理を教えてくれる人その定食で心をほぐされた人哲史の料理への姿勢が段々と変化する過程1皿作るごとに各々の事情が絡み合い、哲史の感情が揺さぶられます。エピソードが心に染みます。ちょっと呑気な神様が出てくるのも癒されます。前後編で、読み切りの形でまとまっています。読みやすいです。でも電車の中などで読んではいけません。集中できる一人の部屋で、読むのがオススメです。おかわりしたくなります。丁寧に料理されたお話ですから。『てしをや』は、いつまでも続いて欲しい。出会えてよかった、そんな物語です。
準備1.今日は誰も訪ねて来ない事を確認しましょう。準備2.ビールでも飲んで少し酔いましょう。準備3.タオルもしくはちり紙、洗車用スポンジを利き手にセットしましょう。準備4.ソファーなど好きな場所でリラックスしましょう。準備5.あっ、女性の方は化粧とか落としといた方がいいでしょう。特に目元など。さあ、この小説を読む準備はととのいました。思う存分、涙腺の汚れを洗い流して下さい。以上です。
独り立ちし、結婚し、子供が出来て今、このタイミングでこの作品に出会えたのも何かの縁を感じずにはいられません胸を張れる家庭の味そんな料理を出せているのか上手い下手ではなくどんな思いを込めて料理をしているのか料理に思いはこもるそしてその日々は積み重なっていくもう直ぐ自分が生後1万日になるとふと思った万感の思いを込めてどうぞめしあがれ
タイトル通り、これは人のいるところで読んではダメなやつです。なぜなら、これを読んだら漏れなく涙腺を破壊されるからです。玉ねぎのみじん切りが可愛く思えるほど、ぼろぼろに涙を流す目にあいます。話は前後構成で起承転結がはっきりしており読みやすいです。話の性質上登場人物の心はみな深く傷ついております。その心の傷に寄り添い癒して行く。まるでドラクエのホイミをかけるような作品で、その時に登場人物の心がダイレクトに読者(わたし)にシンクロしてきます。それほどのめり込んでしまうものが描かれており、そのせいで、まぁ涙腺が破壊されるわけです。泣きたい時、一人の時、読みたくなる暖かな作品です。母に会いたくなります。
レビューとして紹介するにあたり、とりあえず最初に書いておかなければならないことは、『この作品は通勤・通学中に読むな』です。この作品は全力であなたの涙腺を襲います。基本的に1話辺り前後編の2部構成で非常に読みやすくなっているのですが、その1話1話の破壊力たるや相当なもので、恥ずかしながら私もあっさりやられました。本作では定食屋を舞台に、キャベツの千切りも出来ず、妹に呆れられる有様だった主人公が、神頼みで料理の上達などを願う度に、料理に込もった想いや思い出に触れ、少しずつ成長していく様が丁寧に描かれています。もちろん他の「なろう」料理モノ同様、料理は毎回美味しそうに描かれていますし、読後には登場したメニューを毎回食べたくはなるのですが、料理に込められた想いに触れた満足感を毎回味わうことができるのは、本作ならではないでしょうか。皆様もどうぞ、めしあがれ。
「人の思い」「生きるということ」私はがんという病を得て、そういう機微に敏感になりました。そんな私の一押しです!この作者様の本は、一度本屋で手に取っているんですよ。けれどその時は購入しなかった。何故か・・・文頭にあった主人公の荒れた気分が、その時の私の食指を動かさなかったんです。しかし交流のある方に勧められて、こちらに読みに来てみたら以前手に取ったことのある作品だったことがわかりました。こんなご縁のある作品は読まなきゃダメだと、本腰を入れて最後まで読んでみたら、涙が駄々洩れるのを止めることができませんでした。人の生きざまが、生きていく姿勢が、心が描かれている作品です。どこまでも優しい包み込まれるような文章にあなたも癒されてみませんか?明日のあなたは今日と違う人になってますよ、きっと。
料理の描写も細かく調理法から書かれており読んでいて料理の過程が目に浮かぶよう。匂いや調理する音すら伝わりそうな文章力がある。料理をよくされているまたは研究した方の作品だと思う。が、この作品の真骨頂は心理描写だ。読んでいて感情を揺さぶるほどの作品は世にそう多くはない。感動作だと言われるものでも私は涙するほどは感動することはない。が、この作品は読んでいて涙が自然に溢れてきた。もちろん人によって年齢や経験、趣向の差異があるから誰もが感動するとは断定できないが、ぜひこの作品を読んでいただきたい。泣かせるという点ではこれ以上の作品をなろうで読んだことはない。