評価:★★★★☆ 4.2
“証”それは、魔力を持つ者に浮かぶ模様のことであり、生贄として選ばれた者の印。
レオンの恋人、ジルの胸にもその証が突如として現れていた。血で受け継がれていくはずの証が、ジルの胸に浮かぶはずなどない。
混乱していたレオンだったが、その理由を知った時、大切な彼女の願いを叶えるため、危険を承知で動き出す。ジルを想いながら葛藤するレオンと、未来を願い、苦しみ悩むジル。
残された時間を共に支え合い、生き抜いた二人の、悲しく切なくも温かい恋の物語。拙作「私に世界は救えません!」のキャラクター、レオンの過去の物語です。
私に世界は救えません! を読まなくても恐らく読めます。
話数:全18話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
最初に断っておく。この物語はメリバでありハッピーエンドではない。厳しい現実を前にした二人の男女の、残された時間を支え合い生き抜き育まれた愛の軌跡だ。「レオン、貴方のプロポーズは……受けられないわ」「何がごめん、だ。迷惑掛けられて振り回されてるのは、いつものことだろうが」想い合うも結ばれることができない二人。そんなメリーバッドを、切なく紡ぎあげていく。紡がれていった物語は終盤で頂点に達し、そして涙を誘う。ラスト数回は涙なくして読めないこの物語。読めば作者の得意とする心情描写にグサグサと刺されることを保証する。冬の寒い夜。人肌が恋しい時期でもある。心温まる話を読みたくなる気持ちはよく分かる。だが、切なくて胸がいっぱいになる話も、良いものだ。
この世界には悲しき定めがある。暗黒竜(ジェリーマ)を封印し続けるための悲しい儀式。神の使いと祈りの巫女は、その身を持って暗黒竜を封印しなければならない……掟。主人公レオンの愛した女性は、祈りの巫女だった。いつか必ず死ぬ定めの女を、心から愛していた。だからこそ。レオンは模索し、彼女のために立ち上がるのだ。どうにかこの運命を変えようと。彼は抗い、生きる。彼女を救うと心に決めて。愛する人との、結婚を夢見て。レオンは飛び込んでいく。全ての──元凶へと。