評価:★★★★☆ 4.3
健一と怜治は同い年の従兄弟だ。
ともに同じ高校の二年生。
二人は祖母からの遺伝である虹彩異色症だった。
盆に健一の家に行った怜治は『雪月華』と呼ばれる人形を見せられる。
恐怖はそこから始まった。*ホラーテイストなだけで、実際にはホラーとは言えないかも……。
敢えて言うなら心霊の類?
「ミステリーホラー」「ファンタジックミステリー」と評価くださった読者様もいました。
ですので、単なるホラーとはちょっと違うと思います。
話数:全39話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
同い年の従兄弟・健一と怜治が、祖母の遺品である雪月華と名づけられた人形を見つけたことから始まる恐怖体験。まず目を引くのがきめ細かく描かれた情景&心情描写だ。人形の無機質な恐ろしさと健一・怜治の細やかな心の動きのシナジーが、ジワジワと読み手の緊迫感を煽る。展開の巧みさも光る。序盤は圧倒的情報不足の状態から始まる恐怖心に焦点が当てられるが、思いついた対抗策を徐々に実行する事で新たな展開が提供されるので中弛みがない。中盤以降は雪月華の目的や、そこに込められた想いなど謎解きに似たスパイスも効いてきて、単なるホラーと言うよりはファンタジックミステリーの様相が強くなる。豊かな語彙と表現力は賞賛に値するが、決して堅苦しい文章ではなく、寧ろ柔らかな印象の文体でスラスラと読み進められるのも好印象。一気に読み切れる、文庫本一冊分の11万字。少し時間が空いた時に是非思い出してもらいたい秀作だ。