評価:★★★★★ 4.5
高校生のミクニは兄ソヨウの消息を追って、地底大窟と呼ばれる地底にあいた大きな穴に辿り着く。そこはあらゆる国から独立した、独自の生態系や不思議な力を持つ開拓員が集う場所だった。サクヤの力によって、開拓員のメンバーとなったミクニは、ソヨウを探しながら最深部を目指して冒険をする。様々な人物との出会いと別れを経て、最深部に辿り着いたとき、そこで大窟に隠された秘密を知る。
話数:全36話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
ミクニという少女の一人称によって物語は進むが、その語りが非常に秀逸だ。最愛の兄の失踪により心に穴があいた彼女の境遇は、同様に何かしらの「穴」を抱える多くの読者にとっては共感できるものだろう。風景描写も素晴らしい。序盤の山場、花が舞い散るシーンは必見だ。まるで自分自身も大窟を降りているかのような感覚に陥る。そして忘れてはいけないのが、本作がダークファンタジーたる所以、ラスト3話での怒涛の展開だ。賛否あるだろうが、私は、ミクニの視点で語られる話であったからこそ、この結末には納得できた。皆様には是非その目で確かめてみて欲しい。10万字を超える大作だが、心配はいらない。あっという間だ。確かな筆力と心地好い描写が、あなたを大窟の奥へと誘うだろう。だけど、ひとつだけ気をつけて。自分自身の心の「穴」に気づかないでいると、取り返しのつかないことになる。深淵から覗く目があることを、忘れてはいけない。