評価:★★★★☆ 4.4
離婚の裁判で悔しい思いをした五十代の萬狩は、ある日、『老犬を最期まで見届けるのであれば』という奇妙な条件付きの家を買う。眉間の皺がトレードマークの頑固親父である萬狩は、必要最低限に老犬シェリーの世話をするだけだったが、後ろをどつかれ、クッキーを与え、花壇を造り……そうやって、しばらくもしないうちに自分の後ろをついて歩くようになった老犬との暮らしに慣れ始める。
他人の距離感を飛ばしてくる『老人獣医』と『業者の青年』の騒がしさに巻き込まれ、彼らの未知の思考回路に頭を抱え、老犬との暮らしのせいで独り言も増えた。それでも移住先の騒がしい生活と、老犬との穏やかな時間は、仕事一本で生きてきた萬狩には新鮮でもあった。次第に『最期まで見届ける』という言葉は重みを増し、そして、避けられない別れの日が迫る――
話数:全41話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
小説を途中で読み止める、というのは多々あると思います。しかしオンライン小説でどこでも読める、といった状況で小説内の50才過ぎのオッサンが「――……どうか、俺に勇気を下さい」なんて言われたら、そのあと覚悟して読まなければいけないじゃないですか。現代カテゴリーですよファンタジーじゃないんですよ。絶対公衆では読まないと覚悟をしつつ、やっと一人だけで読める環境になって読んでみたら…号泣です。50才過ぎのオッサン号泣しました。それだけ日常と喪失と、そして再生が見事な小説でした。「なろう」まだまだ骨太の力作がたくさんあります!