評価:★★★★☆ 4.3
地図の片隅にひっそりと存在する島国の集まり、ブルーテ諸島。その六つの島国の中で最大の国土を持つ軍事国家ペルシ王国。しかし、諸島情勢は移ろい、急速に力を蓄える他国間で敗戦を境にペルシの勢力は衰えつつあるのだった。そんな時代に、ペルシ王国には年の近い三人の王子がいた。第三王子は放たれた矢のような浅慮、第二王子は諸刃の剣のような冷徹さ。そして、第一王子は傷ひとつないまま居城に飾られた美しき盾と揶揄される。沈み行くこの国に相応しいのは、いずれの王子であるのか――。
※目次のGIFアニメは結城様が加工して下さいました。ありがとうございます!
※サブタイトルの《》のみ挿絵ありです。
話数:全167話
ジャンル:エピック・ファンタジー
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
諸島一の軍事国家として恐れられたペルシ王国。しかし敗国となった今は、沈みゆくのを待つばかり。十七歳の子爵家令嬢であるリィアは、男子後継者のいない父のため、女の身でありながら、軍の新規兵として志願することを決意する。入軍式典後の彼女の危機を助けたのは、『美しき盾』と揶揄される、優し気な美貌の第一王子。軍事国家では、王子の美しさなど、何の価値もありはしない。そう感じていた彼女だったが、この王子には様々な秘密があり……。女性作者ならではの繊細さや視点、そして戦記としての骨太さを持った良作です。戦記ジャンルは間もなく、なろう内では廃止されるようなので、残念な気持ちも込めて、私のお気に入り作品をレビューしておきます。
文章量やテーマから、特に今作には強く伝わりやすく出ていると思います。先の戦争で負けたばかりの国の王政が舞台という、個人的にはあまり見ないのではないかと思う初期設定から始まる物語。政治・戦争を通して、それぞれ一方の面からは正しく見えている、どれも決して間違いでは無い「在り方」がぶつかり、登場人物達、そして読者に疑問を呈します。章はどれも見事に作品として美しく完成された区切り。分けて読むなら章ごとをおすすめします。毎回感歎させられました。戦争物はキャラクターが増えがちですが使い捨てずにどれもきちんと大事な役割を担い、物語を盛り上げてくれている。他人との関わりとは何一つとして無駄など無いのだ、と。書き手としてこんな作品が書きたい。インプットするものに悩んだらコレ読んでおこう。そんな素晴らしい作品です、完結おめでとうございます!