評価:★★★★☆ 4.3
後に奇跡の歌姫と呼ばれる少女、トニカ・ルッソ。
幼いころに盗賊団に拾われ、虐げられていた彼女を救い出したのは、マルテという冒険者の青年だった。助けを求める彼女に、手を差し伸べたマルテは共に暮らすことを決めるが、期限を区切った。
「2年で、一人で暮らせるようにしてやる」
彼に、さまざまなことを教わるうちに歌の才能を開花させた彼女は、成功の階段を駆け上がる。
やがて、マルテの区切った2年の月日が流れた。
出て行こうとする彼を、トニカは引き止める。ーーー『このキスで、さよならを』。
彼女は、日々の暮らしの中で何を思い、なぜ、劇場を去ったのか。
これはほんの些細な出会いから、トニカが本当の幸せを掴むまでの話。
※完結しました。
話数:全44話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
その他要素
注意:残酷な描写あり
盗賊団に飼われるようにスラムの底を這うように生きていた少女―トニカと、ギルドの冒険者―マルテ。 落としたひとつのパンから始まる出逢いが、二人の運命を変えていく。 契約から、約束へ。 依存から、理解へ。 二人で過ごす何気ないが幸せな時間も、やがて再び運命に弄ばれるかのように、終わりが告げられる。 他ならぬ、マルテによって。 歌姫としての才能を開花していくトニカと、 勇者としての使命に束縛されていくマルテが、 魔なる者たちの奸計により窮地へと陥った時、……奇跡の歌声が運命を変える。 真っすぐな想いと、葛藤が織りなすドラマと、 二転三転する衝撃のラストを見届けよ……っ 一気に物語へと引き込まれる心地よさを貴方にも。 言いたいのは、 ……とにかく、ハマるて。(渾☆身
トニカとマルテの関係性については、様々な方がレビューをなさっているので省くが、「愛」とはどのようなものか、それを考えさせられる話である。 恥ずかしながら私は、まともに他人に対して恋して愛したことはほとんどない。そんな私には、トニカのまっすぐさも、マルテの不器用さにもまぶしさを覚える。「True love begins when nothing is looked for in return.(本当の愛は、なにひとつ見返りを望まないところに始まるのである)」というサン=テグジュペリの言葉が彼らにはぴったりである。その生き方は是非本文中で見てほしい。
母に捨てられた少女トニカは、冒険者・マルテと出逢う。彼は2年間の期限付きで、トニカに独り立ちするための方法を教えると言い出した。 それは金の為などではなく、仕事などという範疇に収まるものでもない。しかし、好き合っているはずの2人は――互いに想いを口にしないが故に、すれ違う。 そんな彼らを弄ぶのはいつも、マルテの宿命を握る悪魔・ラストだった。 彼の言葉に惑わされ、情愛と使命に揺らぎながら。マルテは独りで闘い続け、トニカはその背に懸命に追いすがる。 人間を愛するがゆえに欺瞞を止めない、悪魔の真意とは何か。その答えが、この物語の果てにある。 ――王道故の安心感と、先を読ませない展開が生む緊迫感。その双方が絶妙に絡み合い、この物語を引き立てている。 このキスで、さよならを。その言葉が意味する結末が、あなたに感動を齎す時。人間を愛する悪魔もきっと、意地悪に笑っていることだろう。
タイトル詐欺だと言いたいぞー!普通「さよなら」と言ったらバッドエンドだろう。キーワードにちゃんとハッピーエンドって載せているのが、また憎いぞ、こんにゃろう。この物語は少女の成長物語であり、少女と青年の愛の物語であり、聖なる歌姫と勇者による魔王討伐の話であり・・・。・・・って、おかしいだろ。恋愛話のはずなのに魔王討伐だと!その魔王討伐に絡んでくる悪魔のラスト。結局話の美味しいところは、全部彼にもっていかれてしまったと思う。これを読んでいるそこの君!私の言葉を確かめるためにも、今すぐ読みに走りたまえ!そうすれば「このキスで、さよならを。」という、バッドなタイトルにした意味が解ることだろう。
この作品はすごく読みやすい。するするっと読めちゃいます。しかも、ありきたりじゃないストーリーが、読み手をぐいぐい引き込んじゃう。ぐるりと張り巡らされた伏線、全て回収されるからこその、読後のスッキリ感。でもね。この作品の本当の魅力は、リアルで細かい心理描写なのです。主人公トニカやマルテ、さらに脇役であるキャラたちにも、ぐいーっと心が入っちゃうんです。なにやってんの、マルテ!違う!そこはそうじゃない!トニカ、頑張れ!大丈夫、もっと自信持って!ラスト!この悪魔、なに考えてんのー?ああっ、切ない。泣ける……。もう、ドキドキ、ハラハラ、ほっこり、ホロリなのです。大げさだと思う? なら見てみよう。「このキスで、さよならを。」タイトルはこんなだけど悲恋じゃないから。ちゃんとハッピーエンドだから。読んだら分かるよ。私の言っていることがウソじゃないってね。
「このキスで、さよならを。」タイトルから、悲恋だと思ったあなたにお伝えしたい。このお話は、ハッピーエンドである。主人公は、悲惨な境遇の少女トニカ。彼女が出会う男は、秘密を抱える冒険者マルテ。この二人が出会い、関係が深まり、事件が起き、解決するストーリーだ。ただ、ハッピーエンドに至る道はとてもデコボコしていて、なかなか焦れったくなるかもしれない。狂言回しのラストという存在にも、ぜひ注目しながら読んでほしい。ただのラブストーリーではなく、登場人物たちの成長物語でもあるこの作品は、幸せがじわじわ染み出るような最高の読了感だ。「このキスで、さよならを。」このタイトルがストンと心に残るエンディングは、あなた自身の目で確かめてほしい。
心理描写がいい。深い。大人でも、子供でも与えられている今の環境が普通で、知らずうちに受け身で生きているのでは無いだろうか。こちらの作品、ジャンルを確認してはいないが、異世界恋愛だと思うのだが、そのジャンルで括られて、ジャンルから作品を選んで読む方から見落とされてしまうのはもったいなさすぎる。深い、実に深い。昨今の世の中は空気を読んで行動するのが当たり前で、当たり障りのない行動をしてはいないだろうか?それでは駄目なのだ、ということを優しく静かに、だが熱く語りかけてくれる作品だ。普通の大人こそが読むべき作品だと思う。
愛し合う二人がいた。トニカ・ルッソとマルテ・ベルトラーニ。トニカは彼と離れたくなかった。マルテは自分が居なくなった時のことを考え、突き放すしかなかった。奇跡の歌声を持つトニカは。不幸な生い立ちもあり、幼い子供のような人物で。でも誰よりもマルテの事を愛していて。だからこそ、マルテが離れていかないよう、間違いを犯してしまうのだ。悪魔はそれを見逃さない。トニカとマルテは悪魔に試され、苦悩する。そうして二人が下した決断とは。このキスで、さよならを。その真の意味を。是非、あなたに知ってほしい。あなたはこの小説で、新たな可能性を知る事になる。
この話の始まりは、盗賊団に拾われた少女トニカが、マルテという青年に拾われるところから始まる。奴隷同然の生活をしてきたトニカと、関係作りがあまり得意ではない不器用なマルテ。そしてこの二人と契約する、悪魔。不器用な者同士繋がりあい、ぶつかりあい、そうして少しずつ進んでいく中に現れた悪魔によって二人の関係はさらに変化していく。基本的にヒーローであるマルテは不器用な男で、決してスマートではない。むしろ立ち振る舞いなら悪魔の方がよほど軽い。だが、それがいい。そんな二人が周囲とかかわりあって不器用なりに幸せを模索していく、そういうお話なのだ。
最近、小説を読んで泣く事が無かった。涙必須、の歌い文句を見ても涙は一つも溢れなかった。でも今日は泣いた。最新話を読んで泣いた。トニカとマルテの心が私の中に入ってきて泣いた。主人公、トニカ・ロッソは盗賊団に拾われて酷い生活をしていた。買い出しに行かされて、パンの数が足らなければ殴られる程に。パンの数が少ないのは、落としたからだった。落としたパンを買いたい、と言った男がいた。悪魔憑きと呼ばれるマルテという男だった。二人は出会い、ある事をきっかけに二人で暮らし始めるのだが……あらすじのキーワードにハッピーエンドとあった。それを信じたい。心を震わす物語を求めている方、必見です。完結済、なんて、とても待ってはいられない。