春恋ひにてし~戦国初恋草紙~ 完結日:2018年3月5日 作者:橘 ゆず 評価:★★★★★ 4.5──その日、私は生涯最初で最後の恋に落ちた。 武田勝頼とその継室、北条夫人の出逢いの物語です。 年の差18才のご夫婦のラブラブな新婚生活が見てみたくて書いてみました。 カクヨムさんの方にも投稿しています。 話数:全9話 ジャンル:ラブコメ 登場人物 主人公属性 女主人公 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 初恋 北条夫人 史実 年の差 年の差夫婦 悲恋 政略結婚 日常 武田家 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
結末をネタバレされた作品を読まされること。これほどの苦痛は他にあるまい。読書には「初見の楽しみ」と、「結末を知って読み返す楽しみ」があり、ネタバレは前者を奪うからだ。この時、その読書の価値は半減したと言っていい。しかし、歴史小説は別物だ。史実、つまり結末は最初から公表されている。したがって歴史小説を書く時は、結末までの道をどれだけ盛り上げられるか、それが重要なのだ。本作は武田の滅亡という結末、その直前の勝頼夫妻の物語。滅亡そのものは今作には描かれていないが、その後に待ち受けるのは避けられない結末。読んでいると、あまりにも幸せな勝頼夫妻の様子で忘れてしまうが、そこには確かに滅亡の暗い影がちらついている。今作を読む時は、ぜひ事前に「天目山の戦い」と検索してほしい。そうすれば本作があなたに「初見」なのに「読み返す」ような不思議な感覚を味わわせてくれるだろうから。
武田勝頼と北条夫人の甘い物語。なお北条夫人は、一四歳で武田勝頼の継室として嫁いでから、わずか五年後に命を散らす。享年、十九歳。わたしたちの目がいきがちなのは、彼女の『悲劇』だ。武田八幡宮の魂をこめた願掛け。そして……。「黒髪の乱れたる世ぞ果てしなき 思いに消ゆる露の玉の緒」という切なすぎる辞世の句。しかしわたしたちは花を愛でる時に、その散り際ばかりに目を向けるだろうか。散り際は美しい。だが、満開の頃もまた美しい。本作は、たとえ一瞬でも武田勝頼公と北条夫人が幸せの絶頂にあった頃のお話しだ。天国にいる彼女らも、このお話しを残してくれたことに感謝しているのではないか。そう思えてならないのである。