私は「おかえり」といいたい

『不倫っていけないことでしょう！？』これは、とあるドラマにおける反町隆史さんのセリフです。私もそう思います。だから1話を読んで、すぐに止めるつもりでした。「チッ、不倫の話かよ！ 胸くそ悪いわ」と、考えました。しかし、なぜか手が止まりません。続きを読んでしまうのです。結局、一気読みするハメになりました。カス男とバカ女と愚直な男。幸せになるのは誰でしょう？

一気に読み進めてしまう、おもしろさがあります。和斗の一途さ、恵子のおろかさ、秀樹の憎たらしさ、読んでいて、否が応にも感情移入して行きます。和斗の恵子への愛は、過去に経験した恩師との別れ、恩師と恵子がだぶっているのですが、このことが無ければ、恐らく恵子は相手にされなかった。もしも和斗がいなければ、恵子は落ちるところまで落ちてしまっていた。このあたりのストーリー展開が絶妙であり、深い感動を生みます。この後の続編がありますが、ぜひ読みたいと思わせる作品です。ひさしぶりに読み応えがある作品に出会いました。

恵子は、会社の上司であり彼氏である秀樹に「おかえり」とは言えない。二人は「不倫中」なのだ。たまたま好きになった男に奥さんが、子供がいただけ。だからすぐには離婚れられないけど、いつか別れてくれると言った。いつかきっと……そんなある日、会社の後輩、杉沢和斗が言った。「…先輩…いけない恋してるでしょう？先輩、哀しい目をしてる……」和斗は、哀しい目をしていた「初恋」の女性の想い出から恵子を案じ、どんなに恵子から無下にされても恵子への想いを貫き続ける。本作は、いわゆる不倫モノですが、軽妙なタッチで書かれていて、重く暗い話ではありません。冒頭からお話の中へと読者をグイグイと引き込んでいく勢いと魅力に溢れています。不倫物語であると同時に、一途な青年・和斗の純情恋愛物語なのです。爽快な読後感の本作を、不倫に悩んでいる方もそうでない方も読んでみませんか？