闇を裂く杖 完結日:2018年2月22日 作者:溝口智子 評価:★★★★☆ 4.1ある青年が死んだ。 彼を殺した男は刑務所に入ったが、恩赦で刑期途中で出所した。 あまりに理不尽な現実。 青年の母は病に倒れ、病床で呪いの言葉を吐く。 青年の従妹は怒りの末に復讐を誓う。 話数:全10話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 女主人公 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 ハードボイルド 婦女暴行 悲恋 杖術 殺人 義憤 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
溝口智子さんの小説を読むたびに思わされる。 この人は、小説の書き方を知っていると。 作法を、枠を、踏み外さない。だがその作風は融通無碍、作品ごとに多様な世界を広げ描き切る。 本作品の舞台は敗戦直後の日本、世相も言葉遣いも今とは違う。そのこと堅実に押さえている。要素のひとつである杖術、その表現にけれんが無い。武術の正道に則った描写には敬意を感じる。 手堅いばかりではない。「闇を裂く杖」にはアクションが、ハードボイルドがある。状景・心理の描写に惹き込まれるが、その魅力は細部に留まらない。小説の構成、山場への「持って行き方」に唸らされる。 ただ技術に流れ、俗に迎合する作品でも無い。古より人間が抱える重い課題である復讐に、普遍的なテーマに取り組んでいる。 読めば必ず何かが残る。思うところが生まれる。小説の名を、その価値を貶めることのない作品だ。 その書き方を、彼女は知っている。