評価:★★★★☆ 3.5

 ――『人が、死ぬわけないだろう!』
 人は、生まれた以上必ず死を迎える……真理でもあるはずのその大前提を覆す、少年の放った一言。
 しかし、この人類最後の都市においては、それこそが摂理だった。
 そこに生きる人々は、そのすべてが、老いることも死ぬこともない、不老不死の身だったのだ。
 ……たった二人。一組の双子の兄妹を除いて――。
 
 かつて命を落とし、しかしその大罪ゆえに消え去ることも許されず、記憶も欠け落ちるほどに永い時間、闇の中に囚われ続けていた男、カイン。
 その彼を闇の内よりすくい上げたのは、それ自体が光であるように暖かい、しかし何者とも知れぬ女性の声が告げる『願い』だった。
 それを聞き届けたカインは、幼い双子の兄妹を、そのかたわらに寄り添い、護り抜いていくことになる。
 果たして――兄妹が逃げるのは、『不老不死』からだった。
 大戦により荒廃した世界を捨てた僅かな人々は、雲上に都市を築き、そのすべてが不老不死を得て、実に千年の時を過ごしていた。そしてその命は、永遠に咲き続ける花『不凋花(アマランス)』の力であり、唯一その花を身に宿し、他者に分け与えることのできる、『春咲姫(フローラ)』と呼ばれる少女がもたらしたものだった。
 心優しく、ただ死の悲しみのない世界を、と願う春咲姫と、彼女を守り支える者たちは、数百年ぶりの新生児であった兄妹にも、純粋な善意から不老不死を分け与えようとしていたのだ。
 しかし、兄妹はそれを拒み、暮らしていた都市の中枢から逃げ出した。
 『死』のない生は、本当の生ではない――それが彼らの、この時代においては異端そのものの考えだったからだ。そして、カインもまた、そんな兄妹の思いにこそ同意する。
 雲上の都市を脱し、限りある命を生き抜こうとする兄妹と――
 『死』を忘れた都市と、兄妹の安寧のため、その命に永遠を与えようと兄妹を追う春咲姫たち。
 そして、かつて死が当たり前にあった世界を識る者と、その後の永遠の時代に生まれた者。
 さまざまな思いが交わる中、明らかになっていく、かつて死んだはずの男、カインの正体――。

 千年以上前より縁によって紡がれていた、彼らの織りなす物語は、どんな結末を迎えるのか。
 最後に残った人類の未来は――どこへと向かうのか。

 原罪によって楽園を追われた人類は、畢罪によって楽園へと帰るのか――。


話数:全39話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
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職業・種族
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時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録