評価:★★★★☆ 3.9
【第一章】[仮面:「彼女」]
結ばれるはずのない相手に恋をし、自分の性格を殺して作り替えた主人公。
コンプレックスを抱いていた主人公は、一人の女の子によって徐々に心を開いていき――
果たして「私」と「彼女」は結ばれることができるのか。【第二章】[告白:すみれ]
小学生の時のトラウマで野球から逃げていた主人公は、ついに殻を打ち破る。
そんな折、昔自分が助けた女の子がうちの中学校にいるという話を聞く。
決勝戦で思わぬライバルに会うも、彼女のために先発し――【第三章】[人の価値、生きる意味:透]
不良グループに絡まれた透はやむなく嫌われ者の女子の大切なものを盗むことを決心する。
そんな中、燈夏という女の子と再会し、その子との昔の約束を果たすために弱小校野球部の紅白戦に参加するも、試合終了の時に彼女の姿はなかった。
妹の瑞花に言われたことを胸に生きる透と、自分で「生きる意味」について独自の信念を持っている燈夏との意見が交錯する。【第四章】[傷薬は毒:燈夏]
すみれの家庭事情を知って自分の気持ちを自覚した透は、ついに「彼女」のときには踏み出せなかった一歩を踏み出すことを決意する。
だがその返事は思いもよらぬものだった。
そこに燈夏という存在が傷から浸透していく。【After Story】[:「彼女」]
時は流れ、親戚に不幸があり、葬式に行くことになった透とその一家。
終わって出ようとすると、入れ違いに「彼女」が入ってきて――家族とは、友情とは、恋愛とは、生きる意味とは――それぞれがそれぞれの考えを持ち、それをぶつけていく恋愛小説――
話数:全48話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:R15
心理描写の丁寧さにまず脱帽した。仮面を被ることによって起こった主人公の葛藤とそれを縁取る心理描写はどこか切なく、苦しく、そして青い。会話文は少ないけれど仮面とそれに連なる描写で主人公がどんな会話をしているのか容易に想像できた。そんな主人公は、恐らく年齢は私よりも下であると推測されるのでその青さを私は目を細くし、微笑みながら眺めていたいとさえ思った。端的な言葉で言い表すと、とても悩み多き可愛い後輩を見ている気持ちに読んでいてなった。心理描写だけでなく時間の経過の描き方がとてもスムーズでスッと頭に時系列が出来上がった。敢えて改善点を述べるのであれば、会話文をもう少し充実させてみると良いと私は思った。心理、情景はほぼ完璧と言って過言はないと思っている。それ故会話文が充実すればこの作品は更なる躍進をするだろう。正直ここまで完成度が高いとは思っていなかった。良い意味で裏切られた。
この作品は、好きな人に好印象をもってもらうために仮面をつける、いい人ぶるといったことが及ぼす心理的影響について、非常に詳細かつ巧みに描写しています。こういったことは誰しも1度くらいは経験のあることなので、なるほどと深く納得させられるとともに、その先がどうなるのかと気になって読み進めてしまいます。難しい心理描写を読みやすい文章で書いているので気軽に読むことができるのも本作品の魅力だと思います。ぜひ一度読んでいただきたいと思います。