評価:★★★★☆ 4.4
サルやイノシシといったリアル・バイオハザードにまみれた長野のとある農村。野生動物に収穫を喰われ、農家は青息吐息。しかし、獣と戦う前に、住民同士の仲が悪すぎて、対策がたたない。「この村には危機に陥った時、かならずふたりのご眷属さまが助けてくれる伝説がある」そこへふたりのはらぺこ新米行脚僧が通りかかった。ふたりの僧は、農家を訪ね歩き、ぶつかりつつも獣害対策に組み入れていく。互いの悪意に用心しつつ、防獣柵を作る農家たち。農繁期まで間に合わないと焦るが、若僧ふたりの下支えと外からの思わぬ助けもあって、十キロ以上ある柵ができていく。
ハートフルで、ちょっぴり笑い。読後、ほんわか幸せな気分になりたい方むけ。
話数:全24話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
正直に言うと、初めは少し取っつきにくい物語だ。やや硬質の語り口に、展開が全く読めない話運び。けれども、文章を消化しようと何度も噛み締める度に、良質の珈琲を味わった時のような不思議な余韻に浸る事が出来る事に気づく。振り回される小気味良い楽しさと、硬質に感じた文章が実は逆に様々な味わいを演出される事に気づくと、次に待っているのは物語の奥底に流れる物語の懐の深さ。初めは散歩をするように風景を眺めながら歩いていたのに、気がつけば小走りになり、読み終わる頃には全力疾走で駆け抜けている自分がいる。そして、何より良いのは、けして、押し付けがましい教訓譚ではなく、あくまでもお伽噺であり、ファンタジーである事。私は、読後「明日同僚に勧めよう」と思った。
最初は昔話から始まり、いきなり問題は現代へ!読者は「え? 伝承話はどうなった?」と思いながら、近隣仲険悪な破綻目前リンゴ農家村に放り込まれます。連載中は「どうなる?どうする?どうなった?」の連続でワクワクドキドキの日々を過ごし、読了後は良かった良かった!面白かった!これはぜひシリーズ化希望!となる読んでいて「気持ちがよい」と感じる作品でもありました。それは主人公達と村人の人柄や大団円のおかげもあるのですが、地に足がついた世界観と背景を感じさせる人物像などの流れる物語の底に無意識に作者の実力や安定感を感じる為か作品が読みやすく、連載が進むごとに物語を読む喜びと心地良さを与えてくれました。読めば ぜひまたこの二人のお話の続きが読みたくなります!追記驚くべきはこの作品をお勧めするとレビューを書いた方々が揃って実力派であること!文才に恵まれた方たちが勧めるだけある作品です。
誰よりも頑張っているのに理解されない。自分ばかり損な役回りを押し付けられている。それなのに、全然感謝されない。それどころか責任を押し付けられて蔑まれるばかり……。全員で力を合わせれば解決できる事を誰もがわかっているのに、誰も動こうとしない。皆をまとめようと奮起して正しいことをしても、誰も着いて来ない……古い体制にしがみつき、変化に怯えるベテラン。新しい物をどうせベテランは理解できまいと心を閉ざす若者。間に挟まれて、自分を守ることに徹する中堅。どきっとした方、読んでみてください。この物語は、長野のとある農村で繰り広げられるヒューマンドラマです。舞台は農村ですが、一般企業で生きる人たちへのヒントが1話ごとにぎっしり詰まっています。冒頭部分はややとっつきにくいかもしれませんが、読み進めていくうちに、恐らく誰もが物語の中に「自分」を見つけることになると思います。
全く先が読めない。一話読むごとに作者の手の中で見事に転がされる。それが実に心地よい。読者を巧みに動揺させるが、決して放り出しはしない。作者の博識ぶりには脱帽し、毎回何かしらの新たな知識を得る。執筆のためにどれだけ勉強されたのか、想像するだけで感心するばかり。ただの薀蓄話に終わらない、個性豊かなキャラクターも魅力的である。難しい言葉を使わず、このキャラクター達が話の行方を導いてくれる。冒頭に提示された謎は?伝説はどうなっているのか、僧達は何者?迷える村人たちはどうなる?布団の中で横になりながら更新されるのを毎回楽しみにしてる。忙しさに追われてまとめて読む時もあるが、それはそれで読み応えがある。りんごの旬も終わるが、来シーズン店頭でりんごを手にする時は新しい発見があるかもしれない。
現代の長野県。りんご作り。獣害。村社会の難しさ。農家の夜逃げ。これだけ並べると、どこの社会派小説か?!と思うだろう。それが、違うんだ。マカロニ·ウェスタンなんだ。コメディなんだ。そして、ファンタジーなんだ!この作品のリアリズムは、クロサワ映画のチャンバラのリアリズムなんだな。ツマラナイ等身大という意味のリアルではない。エンターテインメントに奉仕するリアルなのだ。“この素材をこう料理してきたか!”という驚きを味わうための、洒脱な小説。直感的に、誰が読んでも、上手さを体感できるだろう。“ヒューマンドラマ”というジャンルに分類されているが、ファンタジー好きな方こそ、ぜひ。極上の冒険譚は、どうやら長野県のりんご畑で採れるらしいので!