竜宮城の惨劇 完結日:2018年5月16日 作者:菱川あいず 評価:★★★★☆ 4 竜宮城で起きた惨劇。血で染まった和室に落ちていたのは、巨大な魚の死体と人間の腕。白昼の竜宮城で一体何が起こったのか。 昔話「浦島太郎」の世界を舞台とした短編ミステリー。 話数:全9話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 どんでん返し 一発逆転 昔話 浦島太郎 短編 短編ミステリー 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
菱川あいず氏の発想力はどこまで飛翔していくのだろうか?舞台はなんと竜宮城である。そこで起こる乙姫殺人事件。冒頭で繰り広げられる魚達の舞い踊りに始まって場面は急展開のラブシーンとなり、その後に起こる乙姫殺人事件。全く菱川氏の巧みなトリックに見事にはまってしまう衝撃のラストシーン。これをミステリーといわずに何というという感じである。未だかつてないラブミステリーに読み手は引き込まれてしまうのだ。菱川氏のあり得ないブッ飛んだ発想力には驚嘆するばかりである。心から菱川氏に拍手を贈りたい!そんな作品である。
昔話『浦島太郎』を題材にしたミステリ。 昔話をモチーフにとか、ベースとして、な作品は結構あるし、設定やキャラクターを流用した、所謂パロディなどもそう珍しくもないけれど。 この作品は少し違う。 これは『浦島太郎』という物語に因るところが大きい。 『桃太郎』や『一寸法師』のような一種のヒロイック・ファンタジーでもなければ、『花咲か爺さん』『雉も鳴かずば』のように教訓を含んだ道徳的な物語でもない。 謎めいた物語だ。 逆に言えば「物語に余白が多い」ということ。 作者さんはこの余白を大胆な仮説と新解釈で塗り潰す。 それでいて逸脱はしない。どんなに広がり、転がっても、我々の知る『浦島太郎』に戻ってくる。 浦島太郎は竜宮城を去り地上に帰るし、玉手箱も開かれる。 そして。 「諸説あり」の「諸説」の一つになる「かもしれない」物語。回帰するミステリを存分にお楽しみいただきたい。