籠の魔女と王子の誓い

誰も名前も預かり知らぬ、閉ざした小さな王国に加護を預かる籠の中に生きる愛を知らない孤独な魔女と、無垢で無邪気な誰からも愛される愛らしく小さな王子様……,

籠の中の孤独な魔女に無邪気で残酷な王子様が交わした言葉は魔女との盟約にて誓約なれば、違えてならぬと孤独な魔女は言い聞かせたに……。

魔女との言葉を忘れた幼い王子が違えた盟約と誓約に、災いと哀しみの焔が燃える。麗しの王子の姿は既になく、王子の命を守る為、自らの身を捧げた孤独な魔女にも、王子の呪いは決して解けず、次代の魔女の生まれまでと王子は皆の記憶から忘却の彼方の眠りに就く。

それから幾らも季節は廻り、鎖された故郷と似ても似つかぬ辿り着いた小さな島国の観光都市の片田舎、魔女に幼き頃に教わりし薬草の扱いを身を立てる術に変え、薬剤師として女性の姿で煙草の煙に遠く郷里の香りを匂わせている。

故郷の在り方に哀しい魔女へ想いを馳せて、己の罪と己に向き合いながら。