評価:★★★★☆ 4.4
二十八歳の「俺」は、ある日、ふらりと立ち寄ったBARで一人の男に語り聞かせる。それは、四ヶ月前までこの世界に生きていた男の話――
絶縁していた父が肝臓癌末期で倒れ、再会を果たした二十代そこそこだった「俺」。それから約六年に及ぶ闘病生活を一部リアルに、そして死を見届けるまでの葛藤と覚悟と、迎えた最期までを語る。
――聞き手である「僕」は、全てを聞いた後に…。
※話数の少ない中編小説です。毎日夕方に更新致します。
話数:全9話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
こちらの作品は、癌で父を失う男の話だ。私もかつて、父と母を見送った。彼らのような、お互いの生き様を感じとることは出来なかった。父も母も脳梗塞で、病院にお任せするしかなかった。もしも、少しでも、意識を取り戻してくれていたら、どんな話が出来ただろうか……。私はこのお話の彼が羨ましいし、でも、羨ましくないような気もする。………………否! やっぱり羨ましい!!!!
父と一度絆の切れかけた息子が、父との癌の闘病をきっかけに繋がりを取り戻していきます。親子の情愛、介護、別れをファンタジーを交えて書ききったこの作品は楽しい作品では有りません。でも、私達は必ず愛しい人達とお別れする日がきます。この作品はその日を迎える私達に覚悟と献身、そして、愛情というものの素晴らしさを教えてくれます。是非ご一読下さい。
喧嘩別れしていた親子を再会に導いたのは、癌という病気だった。 共に暮らした頃のストレスや怒りをそのまま持ち続けていた息子だったが、末期の癌で弱った父親の介護をするうちに、本来の父親の姿が見えてきて、 やがて心から、父親に一日でも長く、人生を楽しんで欲しいと願うようになる。 死に立ち向かう父親がとてもカッコ良く、失った時間を取り戻すべく献身的な息子もとても魅力的だ。ずっとこのまま、二人が穏やかでいられる距離感をやっと掴んだ日々を、と願わずにはいられないほどに。 思いの外、長くなった闘病生活は、ほのぼのしていて温かい。けれどやがてその日は訪れる。 決してお涙頂戴な過剰な描写はありません。 でも涙無くして読めません。「なんでーーーーーっ!」と号泣しました。 どうか一緒に彼らの闘病生活を見守って下さい。 そして一緒に泣いて欲しい。