評価:★★★★☆ 4
灯子は、“死”という象徴から、かけ離れた世界に生きる少女だった。
塔子は、“生”という象徴から、かけ離れた世界に生きる少女だった。
初夏の、ある日のこと。灯子と塔子は、植物園の、秘密の部屋で出会った。
互いを羨望の目で見ながら、二人のトウコは、それぞれに絡みつく“生“と“死”を交換するべく進んでいく。───とぉこ
───はぁい
トウコの唇に、赤い線が引かれた。紅を引いた唇は、幼気な少女には違和感となって、そこに在った。
トウコは微笑む。
花と死の匂いが、満ちた。複雑に絡まりあった、糸が、解けていく。
血肉と、死臭と、花を巡る、二人のトウコの物語。※縦読み推奨
話数:全4話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
身体は健康でも死にたがりの灯子と、心臓の病で今にも死にそうだけれども生に貪欲な塔子。植物園の秘密の部屋で、二人は運命の出会いを果たします。何もかもが正反対で、互いに羨望のまなざしで見つめ合う二人は、ある共通の目的のために行動を共にし始めます。そしてその背景には、二人の因縁が複雑に絡み合っていて……>ぐしゃりと一人の女の子が赤い花を踏んだ。赤い花びらが血飛沫のように、地面に張り付いていた。>灯子は、塔子は、言う。>「あぁ美しい」>「あぁ可哀想」血と花の赤、包帯と肌の白、鮮烈な色彩とにおいを放つ、耽美的な語りにのせて語られる、この緻密な物語世界に、読み手はくらくらとした酔いを覚えながら没頭するでしょう。
生きるとはなんでしょうか。死ぬとはなんでしょうか。同じ名をもつ、二人の少女。彼女らは出会うべくして出会いました。二人はやがて、思いを絡ませます。一人は、美しい死を。一人は、強き生を。その結末はあなたを呑み込み、深く深く考えさせます。生きるとは、死ぬとは、美しいのか。それとも、汚らしいのか。もしかすると、この作品にはその答えがあるのかもしれません。