雨宿る喫茶店 完結日:2018年7月25日 作者:みつながめい 評価:★★★★★ 4.5じめじめした長雨の季節、その喫茶店にはいつもと違った客がやってくる。 怖くない怪談です。 (縦書きPDFのほうが読みやすいかもしれません。個人的にはおすすめです) 話数:全4話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:喫茶店 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 マスター 純愛 葛藤 親子愛 隠された能力 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
先代から引き継いだ喫茶店を、ひとりで切り盛りするマスターは、先代同様、不思議な能力を持っていた。 見えない何かを認める能力。しかし、その能力は強力なモノではなくて……。 いつもは、囚われないように視線をはずし、一緒に来店された、見えるお客さまにコーヒーを炒れるだけだった。見えるお客さまには格別の一杯だったようだ。 ある時、ひとりの男性が来店される。見えない若い女性を伴って……。 いつもと違う様子に、マスターが思わず視線を向けてしまうと、そこには……。 見えざる者がヒロインなのに、怖くはない。むしろ、ふたりのやりとりは微笑ましく思える。 これも、ラストシーンへの伏線だと考えると、この作品は秀逸。 紫陽花が色変わりするような、見事なハッピーエンドは素敵すぎる……。
入梅の季節、長雨がしとしと降り続くある日のこと。湿った空気の匂いとともに物語は幕を開ける。主人公が営む喫茶店を訪れる、一人の中年男性。その後には若い女性が連れ添っているのだが、奇妙なことに彼自身はその存在に気付いていないらしい……主人公には、父親譲りのいささか風変わりな能力がある。この世のものならざる「あれ」が見えるのだ。いや、見えてしまうと言うべきか。しかし、今回の「あれ」はいままでとなんだか様子を異にする。戸惑いながらも相手の言葉に耳を傾けてしまう主人公。やがて短い時間を共に過ごし、いままでの自身を省みるうちに感情の萌芽を知るが、梅雨が明けるにつれて彼らの日々も終わりを迎える……明るい夏の訪れを告げる結末に、思わず頬を緩めずにはいられない。さながら雨雫に濡れる紫陽花のように、優しい掌編でした。