評価:★★★★☆ 3.8
山を擬人化したかったんです。異世界なら別に山が擬人化されてても不自然じゃないと思ったんです。
異世界に迷い込んだ二人の高校生が、山をめぐって旅する話。
下に降りたら無双できるはずだけど、主人公が山バカ過ぎて降りようとしない。そんな彼らが山に愛され、世界の成り立ちに迫っていく。そんな話。
話数:全251話
ジャンル:アドベンチャー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
完結日:2018年7月16日
作者:石化
私は山登りが嫌いでした。だってしんどいじゃないですか。汗がいっぱい出るじゃないですか。熊が出るかもしれないじゃないですか。蜂に刺されるかもしれないじゃないですか。危険がいっぱいじゃないですか。ほらね、やっぱり危ないでしょ……?だ・か・ら、山登りなんてしない方がいい……と思ってました。んんー?あれれ、おかしいぞ。何故だか無性に山に登りたい。何故だか無性に山に登りたい。
世に数多ある異世界転移モノだが『山に登る』というジャンルも、これほど心躍る旅路の様子も、この『無彩色世界から始まる異世界山行』という小説を読むまで経験したことがなかった。この作品の素晴らしい点は、現実世界と異世界が『登山』というキーワードによって見事につながれている点だろう。もう一つ興味深いのは戦闘描写の少なさだ。しかし物足りなさは感じず、むしろ愛すべきロリ神様シロたち登場人物の魅力と登山の疑似体験をたっぷり堪能できる。注目すべきはこの物語、登場する神々はみな実在の山に由来している。あるいは作中のイベントも神話のパロディだったりして、奥行きと造詣の深さには非常に満足した。ふと清々しい山の空気を欲しても現実には難しい。豈図らんや、幸いこんな身近なところに良い山峰が聳えているようだ。わたしも毎日登っているのだが、ときに読者のみなさま、ぜひとも一度入山なさることをお勧めします!
この作品の一番の魅力は、何と言っても情景描写の美しさにある。読んでいる内に実際にその場所に行ったかの如く錯覚させられる情景描写の細かさ。景色の美しさに見とれる主人公の感動を、読者も共感すること間違いなしだ。 そして、個性豊かなキャラクターたち。のじゃロリ神のシロを筆頭に、主人公たちは様々な神と出会い、交流を深めていく。面白いのは、その神が全て実在する山をモデルとしていることだ。 そして、この作品は異世界転移モノであるにも関わらず、戦闘シーンがほとんど存在しない。三章などほとんど山を登るだけで終わる。それでも、全く飽きることなく楽しく読めるというのもこの作品の凄いところだろう。 最新話では新キャラも登場し、ますます盛り上がっていくことが予想されるこの作品、是非一度読んでみてはいかがだろうか? きっと私のようにこの作品の世界観にハマることだろう。