私の妻と、沖田君 完結日:2018年7月11日 作者:九藤 朋 評価:★★★★☆ 4.3私の妻と沖田君は縁側でよく茶飲み話に花を咲かせる。 沖田君とは新撰組で有名な、あの沖田総司だ。 話数:全136話 ジャンル:料理モノ 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 新撰組 沖田総司 転生 注意:R15 なろうで小説を読む
■〝ヨコハマ買い出し紀行〟と言う作品がある。三浦半島を舞台に女性型ロボットと身近な人々との何気ない日常を描いた作品だ。当初は誰もがスローライフコメディと思うだろう。だが老いないロボットの視点により静かに移ろいゆく世界の〝人類の滅び〟のドラマの描かれていることに後で気付かされるのである■そう、読前と読後で作品に抱く印象が全く異なるのである■さて本作だが、新撰組・沖田総司の幽霊がとある夫婦のもとに現れる事で、何気ない日常生活の微笑ましいドラマが読者に語られる。幕末の人物と現代生活のギャップに思わず微笑ましさを感じるだろう。だが物語が進むに従い過去と現代を橋渡しする〝意外な仕掛け〟が気づかぬ間に、作品を歴史ヒューマンドラマに変化させてしまうのである。そしてあなたは思うはずだ『登場人物の彼らは何者なのだろう?』と■そしてその答えに気づいた時、あなたは深い切なさを感じるはずである。名作だ
冷たいお茶とお煎餅を添えながら読みたくなる小説です。沖田君の幽霊を交えた、ほのぼの日常小説です。主人公の「私」は妻の手料理を、沖田君と一緒に食します。共に食事をする事とは、コミュニケーションそのもの。主人公の「私」は幽霊である沖田君と共にビールを飲み、菓子を食い、食事をし、沖田総司に新撰組での話を聞いていきます。疲れた時に、何か心温まるものが読みたい時に、この清々しい畳のい草の香りがする、優しい羽毛のような小説に触れてみてください。夕餉の前にも是非、ページを開いてみてください。ご飯がとても美味しく感じます。
新撰組の沖田総司をモチーフに、現代ものをなろうで描く。そう聞くとつい想像されがちなのは、転生ものやハーレムものだろう。けれど、もちろんこの作者の物語がそんな型にはまるわけがない。紡がれるのは、驚くほどに静かで平穏な日々だ。毎話のように出てくる料理やお菓子。舌鼓を打つ沖田くんと同様に、私たちもついにこにことご相伴に預かりたくなる。けれど忘れてはならないのは、彼は既に死者であるということ。輪廻転生の輪から外れたものたちは、一体何を望んでいるのだろうか。時折垣間見える沖田くんの陰、交錯する夢と現実、遠い記憶。積み重ねられる平凡な日常の愛おしさと、過去の心残りが互いを引き立てている。新撰組なんてほとんど知らないと言い方にもぜひ手にとって欲しい。作者が描きたいのは、新撰組という肩書きを持っただけのキャラクターではなく、ただひとりの人間であった彼らなのだから。
沖田総司。剣術の天才として名高い彼を知らない方はそういないでしょう。しかし、生きた彼の人となりはどのようなものだったのでしょうか。きっとただ天才であっただけでなく、もっと人間臭い一面もあったのではないかと思うのです。では、幕末の動乱からかけ離れた現代に彼が迷い込んだとしたら。想像するとちょっと面白くありませんか?そんな想像を叶えてくれるのが、本作品『私の妻と、沖田君』です。主人公である私夫婦の暮らす日常に、ふらりと現れた沖田総司の幽霊。どんな波乱を持ち込むかと思いきや、時にお酒を酌み交わし、時に食事に舌鼓を打ち、時に談笑に花を咲かせる。そんな不思議と穏やかな日々が描かれています。ほのぼのとした空気、美味しそうな食べ物に癒されること必至の一作。でも、時折交錯する現在と過去に絡んだ謎が、分厚い読み応えも与えてくれます。宜しければご一読頂けたら幸いです。
言わずと知れた人斬り集団、新撰組で最強と謳われた剣士、沖田総司が幽霊として甦った。しかし積極的に悪党を成敗したりするわけではない。彼は『私』と妻と一緒に暮らし始めたのだ。全体を通して剣術を披露するのは少ない。この物語は現代の文化や食事を楽しむ沖田君の様子を見守る『私』の視点で描かれている。九藤朋さんの筆力の高さでなんとも言えない魅力にあふれた作品になっている。なぜ沖田君は『私』と妻とともに暮らすのか? 『私』との因縁は? 分からないことだらけだが、一つだけ言えるのは物語に登場する料理の描写が上手くて美味い。それもまた魅力である。是非一読願う。