『倫敦大使館付武官、里中勇治郎』
1888年、倫敦。
倫敦大使館付武官として派遣された海軍少尉、里中勇治郎は、本国の密命を受けていた。
彼には裏の顔がある。
日本國警視局降魔課ーーー里中は、明治の時を以て歴史の表より消えた陰陽寮の命脈を継ぐ、怪異国防を担う者の一人である。親日家であるイギリスの名家、エドワース子爵家を襲う霊障を払えと命じられて出向した彼は、エドワース家の奥方夫人を襲う霊障と切り裂き魔事件の繋がりを疑い、切り裂き魔事件を追っていた。
その中で彼は、エドワース家の美しい一人娘、アリス・エドワースに心を惹かれる。
これは堅物の日本軍人が、イギリスの子爵令嬢の為に奔走した時の記録である。
※※※
『《七殺》の久遠〜日本国警視庁降魔課の男〜』
※ただし普段は専業主夫。
天野久遠は、無精髭に寝癖頭のぼんやりした男だ。
稼ぎ手の嫁様には、失敗しては怒られてばかりで、ご近所さんからはヒモと陰口を叩かれている。
それでも生まれた娘は可愛く、彼女のお世話を頑張るものの、子どもを育てるっていうのははたから見るより色々やらなきゃならない事が多い。
日々の食事や着替えの世話から、予防接種や突発の熱。様々な出来事に振り回されて失敗ばかりの彼には、しかし裏の顔がある。
表に出ない公的機関、日本国警察警視庁降魔課所属の凄腕巡査―――《七殺》の久遠。
降魔課黎明期に活躍した伝説の男、里中勇治郎の血を継ぐ彼は、密命を遂行する傍ら、要請あれば人に害なす怪異の収束に赴く。
でも、夜出掛ければ、夜遊び扱い。
子どもの検診の帰りに寄り道すれば、不審者扱い。それでもめげない久遠は、今日も嫁と娘を愛でながら、ヘラヘラと生きて行くのである。
―――笑顔の裏に、全ての闇を覆い隠して。
降魔の系譜
完結日:2018年7月10日
作者:peco
評価:★★★★☆ 4.2
話数:全26話
ジャンル:異能バトル
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
日本國警視局降魔課。闇に蔓延る妖を討つ、その組織には1人の海軍少尉が所属していた。 その男――里中勇治郎は、本国の命を受けて倫敦へと渡り、美しい子爵令嬢と巡り合う。彼はあくまで任務を全うし、毅然たる武官として在り続けようとしていたが――その胸中に秘められた恋心は、隠し切れるものではなかった。 やがて彼は、どこかいけ好かないオースティン・アダムス卿と共に、倫敦に渦巻く怪事件の真相に迫る。その果てには、和と洋の神話を巡る死闘が待ち受けていた――。 「このキスで、さよならを。」や「装殻者シリーズ」でお馴染みのpeco先生が送る、本格派伝奇ファンタジー。西洋と日本、それぞれの神話に基づく味わい深い戦闘シーンと――大和魂と言う名の、やせ我慢が見どころです。
題名から察せられる通り、この作品は固い。いや、固いというよりは強固な鎧と表現した方が良いだろうか。ジャンルとしてはファンタジー、和風ファンタジーのようなもの、と表現できる。魔法、などではなく、神話などを元にした術を行使することで魔を払う。主人公である堅物日本人も魅力的ではあるが、やはりこの作品の持ち味の一つは、この、神話などを元にした戦闘であろうか。西洋と東洋、宗教観の全く違う二つの術の組み合わせ。ベルゼブブやアスタロトの例からも分かるが、それらをただ強力な悪魔としての記号として使用するのではなく、それらの原典などを綺麗に形式とし、歴とした武器として使用する。よく調べられていて、最後は思わず関心してしまった。剣と魔法のファンタジーに飽きていなくとも、これは読むべきである。大和魂(やせ我慢) 気持ちは分かるが我慢は身体に悪いので大和魂(むっつり)になるべきである。