評価:★★★★☆ 4.4
三年前、そうとは知らぬまま東国の王を助けた妓女の香梅(シャンメイ)。雨の降りしきるある日、見知らぬ男が彼女を訪ねてくる。かつて助けた東国の王の兄を名乗る男は、「あるもの」を返してくれれば、礼として何なりと彼女の願いを叶えると言ってきた。
自身の誇りを汚されたことに腹を立てた彼女は、「あるもの」と引き換えに自分を正室として妻に迎えるように男に伝える。妓女あがりの女を、王族である男が娶ることなどないと踏んだ上で。
ところが男はそれを拒むどころか、簡単に承諾してしまう。慌てた女は百夜通いを提案するが、男はそれさえもあっさりと受け入れるのだった。
これは意地っ張りで素直になれない女と、不器用で言葉の足りない男が織りなす恋物語。
『【連載版】龍の望み、翡翠の夢』の続編ですが、こちら単品でお読みいただいても大丈夫な作りにしています。
※この作品はアルファポリスにも投稿しております。
話数:全11話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:じれじれ
展開:未登録
注意:全年齢対象
日本語って、こんなに綺麗でしたっけ?……という素直な驚きと感心と、そして尊敬を抱かずにはいられない当作品。物語の主人公はツンデレな妓女。昔愛した男のことが忘れられない。とあることの「礼に」と訪れた一国の宰相に、戯れて「私をお嫁さんにして」と言い、男が「いいですよ」とさらりと言えば、慌てて「百夜通い」を言い渡す。ツンも、ツン。男も男。やっていることが不器用極まりない。もどかしい。そんな不器用な男を相手に、男を手玉に取ることなんぞ朝飯前のはずの妓女が翻弄される。しかし、コジラセ妓女は素直にはなれない。果たして、この二人の想いはどこで交錯する?ドラマチックな展開に目が離せません。読めば、あっという間にこの華麗にして甘美な世界に連れ去られること間違いなしの逸品です。どうぞご覧ください。
妓女でありながら「触れるな」という一国の宰相相手に「自分と結婚したければ百夜会いに来い」というそれでも男は会いに来る雨上がりの夕方には 一輪の白い薔薇を手に持って何故なら男は 女を心の底から愛しているからけれど強情な女にはそれが伝わらない哀しい女と哀しい男 百夜通いのその先には何とも可愛らしい 不器用な大人の恋物語が花開く小梅、雨もいいものだよくつくつと笑いたくなる そんなお話
もっと早く読めば良かった!面白くて一気に読んじゃいました。彼女は西国一の妓女。彼は西国を支配する東国の王族……。そんな二人が出会った場所は楼閣。彼女が素直になれないのも、生まれ育った環境がそうさせているんだから仕方がない。身を守るために壁を作るのは当たり前!だけど少しずつその壁が崩れてくるこの感じがたまらない!梅ちゃん可愛い……。そして雨仔の不器用さが愛しいっ!私が幸せにしてあげたいよっ!普段と怒った時のギャップもまたイイっ!!!!読んで良かったです!!!雨仔いいなぁー……。
後悔は先にたたない。有名な諺だ。言ってしまったことは、悔いるしかないのだ。そう、この女のように。楼閣に住む気まぐれな猫と、筋金入りの朴念仁。この二人が出会うなど、運命も道端の石に躓いたりもするのだ。そして転んだ拍子に運命の歯車が動き出す。どう見ても釣り合いも似合いもしない二人。ある一つの約束が、拍車をかけた。お互いが扱いに困る、気まずい空気。絆したのか絆されたのか。この物語の結末は、読破した者だけのご褒美。知りたくば、読むしかない。なに、読めばよいのだ。珠玉の言葉で綴られたこの物語は、息もつけぬほどの恋物語なのだから。
美しき西国一の妓女、香梅。誇り高き彼女が燃えるような恋をしたのは、もう三年前のこと。月日が優しくゆっくりと彼女を癒すなか、一人の男が訪れる。しとどに濡れた雨の化身のような男。かつて愛した男の兄だというこの男は、太陽と月ほどに違う。弟が香梅に渡した品を返してくれと言う男へ、困らせてやろうと言った一言。「ならば、あなたのお嫁さんにしてちょうだい」指一本触れぬ百夜通いをやり遂げたならば、あなたについて行ってあげる。意地っ張りな梅の花と不器用な雨の仔。中々縮まらない二人の距離と、すれ違う二人の心。見ている読者は堪りません。二人の様子に焦れて焦れて、時にくすりと笑い、時に手に汗握って応援し、時に切なくなり、幸せを願ってしまう。美しい王道の恋物語を、あなたも二人と共に歩んでみませんか?ほら、しとしとと降る雨の音と、甘やかな梅の香りがしてきますよ。
こいつは、ほんとになんてゆうの。もっとこう……見えるじゃない、ふつうは。なのに、この男ときたら。目的が見えない。魂胆が見えない。虚栄が見えない。本心が見えない。自尊が見えない。我欲が見えない。なんか本当に、玻璃板(板ガラス)のようで、こいつ自身が見えないじゃない。ねえ、あなたの話よ。ちょっと、聞いてるの?「ちょっとや、あなた、では悲しいのです。わたしの名前を知って欲しいとは言いません。どうか適当なもので良いので、この身を呼んでいただけないでしょうか」
三年前、恋敗れた西国一の妓女・香梅。西国の統治を任された宰相、東国の王の兄・雨仔。本来なら交わる事のない二人の運命を変えたのは、かつて恋した男の残した玉璽。「返して欲しければ、あたしをあなたのお嫁さんにして」当てつけのつもりだった一言がきっかけで始まる、百日通いの物語。逢瀬を重ねるたび、女は不器用な男の真意に気づく。愛を知らず、信じられなかった彼女の心に。少しずつ雨が染みこみ、その渇きを潤していく。足しげく通う男もまた、内に秘めし想いを伝えきれずに。悲壮ですらある献身を続ける。その理由は男の過去に――これは未だ愛を知らぬ二人が巡り合い、「家族」となりて、愛を手にする物語。
シリーズの前作から読んでいます。前作で、とっても切なくイイオンナを演じきった香梅。彼女が主役の今作、そりゃもう最初から応援メーターマックスなわけですよ。もう、読者としましては、「さあ! さあ今すぐ幸せに! 出会って一話でポン!」くらいの気持ちで居るんですけど、これまたもう、なかなか、じれったく……!!なかなか素直になれない梅チャン! 何を考えているのかわかりづらい雨くん! ねえ、お互い少し歩み寄れば、あとはもう転がる岩なんじゃないの!?ぐぬぬ、作者の手のひらで踊らされている!!じわじわと盛り上がって目が離せない王道的物語!完結までレビュー待とうと思ってたのにもう待てない!ちなみに今作の略称は「梅雨」と書いて「つゆ」と読むらしいです。六月、雨のなか、外出の予定を延期して。お部屋で読書(web小説ですが)に、こちらの作品、いかがですか?
甘く、たおやかに男を惑わす。その梅の香りに、佇まいに、そこを訪れる男たちは魅了される。楼閣では、今日も一人の女が溜め息吐息。誰がこんなにも美しい女を泣かせたのか。そして涙を乾かすのは誰なのか。涙は乾いても、心の渇きは如何するか。龍が泣かせた姫を、今度は伏した虎が静かに癒やす。きっと誰もが幸せになっていい。自らを囚われの籠に入れるのは、もう終い。楼閣の一番の顔は、もう仕舞い。さぁ、今度こそ自らの幸せを。梅の香りは、ふわりと哀しみを払って、自ら輝く事でしょう。櫛風沐雨――風に櫛り雨に沐うのももう仕舞い。自らの為に、連理の枝となるも良し。幸せにおなり。妙なる梅の香りよ。「龍の望み、翡翠の夢」の後日譚としてあの彼女が主役に。これもまた密やかなヒストリカルロマンス。そして心の自由への飛翔。