評価:★★★★☆ 4
昔々、ある地方――伊予之二名島(いよのふたなじま)には人間は居ませんでした。正確に言えば『鬼』が喰らい尽くしてしまったのです。日の本の民は希望を失い、生きる望みさえ消え失せてしまったとき、一人の武者が立ち上がりました。彼の名は吉備太郎(きびたろう)。そして彼に付き添う竹の中に閉じ込められていた罪人、竹姫(たけひめ)。彼らが出会うとき『鬼退治』の物語の幕が開けるのです。
彼らは様々な人と出会います。仙人、陰陽師、武者、貴族など。出会うことで吉備太郎たちは希望を取り戻しあるいは絶望することになります。しかし彼らは挫けることなく鬼と戦い続けるのです。
『残酷御伽草子 吉備太郎と竹姫』よろしくお願いします
話数:全106話
ジャンル:アドベンチャー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
吉備太郎には幼いながらも悲壮で気高い覚悟がある。 しかしその裏には自虐的な狂気が潜んでいます。 復讐の為なら何も要らない。命も要らない。 人ならざる復讐鬼と化し、鬼と対峙しようとするのです。 そんな彼が、人々と、仲間達と、鬼と出会い、人間性を取り戻して行く様と、復讐と大切な者との間で揺れる葛藤に、心を打たれ考えさせられます。 そして竹の中で長い刻、孤独に過ごした竹姫。 初めて人と出会い、次第に惹かれ、素直になれた時、想い人は変わることができるのです。 しかし待ち受けているのは、残酷な運命。 彼女の苦悩と覚悟、そして想いに、愛しさと切なさを覚えます。(別段、心強さは感じない。) 自然の摂理である弱肉強食の是非と、人間の身勝手さを問うテーマは、醜くそして美しい。 あなたも是非、この物語に没頭してみて下さい。 有意義な時間を過ごせるはずです!
この物語は鬼を倒すため、吉備太郎と竹姫が様々な出来事に遭遇しながら、旅をする。おとぎ話をモチーフにした物語である。文体が語りかけられている。そして、文章が巧い。物語も思考することない。加えて、我々に問いかけてくる。おとぎ話をモチーフにしたアイデアは新鮮で、世界観も独特の雰囲気を醸し出している。表現、世界観、アイデア、構成も良し。ストレスなく読むことができる。異色のファンタジーを読みたい方は特に、読んでもらいたい。もちろん、このレビューを読んだあなたも読んでいただきたい。
この作品は、愛する人々を全て奪われてしまった少年が復讐のために鬼を斬る物語です。復讐のためですので、少年は鬼を斬るのになんの見返りも求めません。お金はもちろんのこと、誰かに褒めてもらうことも、感謝してもらうことも、安らかな生活を得ることも求めません。むしろ感謝して生活の面倒を見ようとする人を振り切ってでも、自ら死地へとおもむくのです。すべて鬼を斬るため。ただ鬼を斬るため。何故なら彼にとって一番褒めて欲しい相手、感謝されたい相手、共に暮らしたい相手、守りたかったそれら全てを奪ったのが鬼だからです。そんな今にも復讐の炎に巻かれて燃え尽きてしまいそうな彼のことを、多くの人がほうっておけないと考え、時に諌め、時に助けようとします。復讐にひた走る少年は最後にどこにたどり着き、その時に誰が、そして何が待っているのか?この残酷なおとぎ話の結末をあなたも追いかけてみませんか?
レビュータイトルのまんまです。絶望から始まる物語、舞台は平安、鬼が村を襲い愛する両親を殺された『吉備太郎』絶望の中見つけるのは日本昔話でおなじみの御伽草紙の登場人物たち、それぞれが作者の個性のまま動き回り、物語を展開させてゆく、全くもって新解釈な御伽草紙である。 絶望を切り抜けるのは剣技か、それとも仲間の絆か、1話を読むと続けて先が読みたくなる一作。 丁寧な言葉遣いと、平安の見たこともない情景が浮かんでくる一作。 さて、本日の話はいかほどに。 ぜひ一読を。
故郷を滅ぼされ、鬼への復讐を誓う若武者、吉備太郎。 竹の中で長い時を孤独に過ごした月の民、竹姫。 純和風の世界。おとぎ話のような優しい文体の中で綴られるのは、残酷な鬼に立ち向かう者たちの葛藤に満ちた物語です。 戦うこととは何か。 正義とは、信念とは、誇りとは何か。 友情とは何か。 若者たちは、それぞれが胸に秘める思いを不器用に持て余し、運命に翻弄されながらも自らの道を選択していきます。 これは新しいおとぎ話でもあり、残酷な鬼に立ち向かうファンタジーでもあり、彼らの苦悩・葛藤を描くヒューマンドラマでもあります。 日本人の心にぐっと響くこの小説。 ぜひ一度読んでみてください。
「月の民」である竹姫は「日の本」の国の竹に閉じ込められてしまう。『竹取物語』とは違い、そこは鬼が跳梁跋扈する世界。お爺さんもお婆さんもなく、姫は竹の中で10年間もひとりぼっち。一方、その鬼退治を期待される吉備太郎という少年がいた(桃太郎の子孫)。しかし、10歳のときに村が鬼に襲撃され、両親も村人たちも皆殺しにされてしまう。吉備太郎は何もできなかった。孤独と無力感を抱えたまま15歳になった少年は決心する。「私は鬼を退治する」その吉備太郎が山の中でまばゆく光る竹を発見するところから物語が動き出す。かぐや姫と桃太郎の子孫による「異色の鬼退治」が始まる!昔話風の語り口は、とても読みやすく、淡々と語られるからこそ伝わってくる怖さがあります。でも、それだけではなく、おっとりした吉備太郎と生意気な竹姫のやりとりにほっこりしたり。いろいろな魅力が詰まった新しい『御伽草子』です。
新しい御伽話を読んでいるそう純粋に感じました洋楽を聴いていようが豊富な知識に裏打ちされた言葉選びがすとんと心におりてくるのです御伽草子という題名からもわかる通りするすると心に入って物語は進んで行きます伝え聞くしか手だてがない現代において情景を想像する必要が御伽話にはありますがこの作品の言葉選びは難しいことを簡単に表現されていますのである種の普遍的なものさえ感じますまた戻りたい一作そう思うのは私だけではないはずです
舞台は、『鬼』がすべてを喰らい尽くしてしまい、絶望に包まれた世界。ある二人の出会いから始まる、日本昔話のエッセンスが散りばめられたファンタジー作品です。丁寧な言葉遣いで語るように描かれる世界はとても魅力的です。年齢も性別も、何も関係なく楽しめます。気になる方は、まずは1話を覗いてみて下さいね!きっと夢中になれます。