評価:★★★★☆ 4.4
翡翠のように美しい瞳をした西国の王。白皙の麗人として名高い王には秘密があった。国王は性別を偽り、男装の麗人として西国を治めていたのだ。
孤独な王を支えるのは、東国から来た美丈夫な男。けれど男にも、西国の王には伝えていない秘密があった。お互いを思うがゆえに、二人はすれ違う。伝えたいのは、ただ一つ。愛しているというその想いだけ。
「梅の芳香、雨の音色〜あなたに捧げる愛の証〜」、「月は夢など見るはずもなく」もどうぞよろしくお願いいたします。
こちらの作品は、短編として投稿した『龍の望み、翡翠の夢』(Nコード N4684DS)の連載版です。10話完結です。
※この作品はアルファポリスにも投稿しております。
話数:全11話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:じれじれ
展開:未登録
注意:全年齢対象
男しか王位を継げぬ西の国艶やかな黒髪の翡翠の目をしたとても美しい王がいたしかしそれは真実の姿ではない西の国にやってきた東の国の男世にも美しい王の姿に見惚れ、その真実を見抜く運命の人――そう呼ぶには二人の運命はあまりにも無情だった王は女であることを隠さなければならないそれを知りながら、男はそれを口には出来ない想いはそこにあるはずなのに伝えてはならぬもどかしく、苦しいそれでもただ側にいるだけで、それだけでこの想いは報われるだが運命は二人を引き裂くためにその歯車を回し始めた――これは切なくも美しい愛の物語龍が望み、翡翠が夢を見た物語――
本作は、一人の男装の令嬢が幸せになるまでを描いた恋物語。 その舞台となるのはこの地球上ではない、所謂『ここではない何処か』。 ……しかし異世界描写というのは難しい。というのも、『この世で最も美しい何処か』とは結局のところ読者の脳内にしか存在しないからだ。読者に自由に想像させる文章――これこそが『この世で最も優れた美文』である。 著者はそれを良く分かっている。だからこの恋物語の文体からは、『とあるもの』がばっさりと削られている。 これが欠けている事により、読者の想像力は逆に、無限大に広がるようになっている。 よって本作に流れているのは、この世のどこより美しい空気。そこで繰り広げられる恋物語を堪能出来るなど、これ以上ないほどの贅沢だ。 だから私は、この物語を一人でも多くの人に読んで欲しいと思っている。 ……あと本作、チャラ男好きにも堪りませんぞ! お勧めです!
このお話は、男装の麗人の王様と、東国の男との恋物語である。心情をメインに描かれた三人称視点の物語には、鉤括弧を用いた会話文は出てこない。でもそれを特殊だと言うのは野暮なのだ。なぜなら会話文などなくてあまりあるほどの、隠し隠される思いのやり取りが詰まっているからである。互いに隠していることがあったからこそ、その思いが繋がったときの終盤に、翡翠の鳥と龍が織りなす螺旋の風は読み手の心をはるか彼方に連れ去っていく。とても美しいラブストーリーを読書の秋にぜひ。
少女は国王の唯一の子であるがゆえ、性別を偽り王として担ぎ上げられた。旅をしていた男は偶々少女を救い、側に仕えるようになった。少女は密かに男を想うが、性別を隠しているためただの女として生きることができない。男は王が女であると気づいていた。色街の女に目もくれないほどに主君に恋焦がれていた。二人の切ない想いの行く末を是非多くの人に読んでいただきたいです。
人は生まれを選べない。貧も富も地位も、そして性別も。女は男であることを求められた。そうあろうと生きた。だが突然現れた異国の男にその歯車を狂わされてしまう。男であらねばならぬ身で、配下である男への想いは焦がれていく。また男も自らの主を唯一の女と認めていた。女と男のすれ違う思いをあざ笑うように刻限は近づく。愛は残酷だ。愛は嫉妬を纏い、狂気を孕み、女を襲う。想いは希望だ。想いは勇気を産み、奇跡を叶え、そして翡翠は闇を飛ぶ。相手を思うからこその、暴挙。その行為に正義はないが、そんなものはクソクラエだ。盛者必衰は時の理。ただその針が早まっただけの事。静かに紡がれる、想いあう物語。それがここにある。
偽りの美しさに飾られた本心を見せない孤高の宝石だった。誰もが疑わない。その偽りが真実の姿であると。硬く、そして冷たいその姿が真実の姿であると。だが男の獅子の心だけが孤高の宝石の真の姿を見抜くたった一度の出会いで。それは冷たい宝石ではなく愛されることを待っていた、小さな花だったのである。獅子の心を持つ男は誓った。この花びらをただの一枚たりとも散らすまい、と。必ずや守って見せようと。果たしてその誓いは守られたのかそれは是非、貴方の目で確かめていただきたい。
女の身でありながら、自らを男と偽り西国を統べる一人の女性。東国より来たりし、龍の名を冠する男。男は女の秘密に気付き、それを守らんと身を捧げる。女は男に想いを寄せるも己の身分がそれを許さぬ。相身互いに想い合えども、想い合うが故に伝えられぬ慕情は幾度となくすれ違いながら募ってゆく。 ○ ○ ○これほど鮮明に景色が浮かび、物語の音が聞こえる作品は稀である。克明に散りばめられた語句が調和し、読者の脳裏に浮かぶ景色はまさに風光明媚。磨かれた言葉の成せるものであると同時に、何よりも音を感じさせる要因は文の構成である。会話文をなくす事によって生まれる無音の文体。これが逆に様々な音を生む。人々の雑踏にあってはその喧騒。月の出でし静かな夜にはか細げなる風の音。艶やかなる甘い夜にはさらりと擦れる衣の音。完成された世界に、時間を忘れて浸ってしまう珠玉の一作。
美しき国王。彼女は男として生きてきた。そしてこれからも……。女であることを隠し、生きてきた彼女はある男に恋をする。秘めた恋心である。そして男もまた秘めた想いを寄せていた。声に出せない想いを抱えながら、気付かれぬよう愛する人を見つめる――――。セリフもなく、それぞれの心情に視点を合わせているにも関わらず、この物語はなんという色の濃さをもっているのか。かといって描写過多というわけではない。この美しい世界観が目に浮かぶようです。また、なんとも読みやすい。文字が多いなと思わず、まずは一話読んでみてほしい。そうすればきっとあっという間に最後まで読んでいることでしょう。この秘めた恋がじれじれで凄くいい!彼らの恋がどうなったのか、是非その目で確かめてみてください。
僕が400字の文字制限いっぱいに駄文を書き続きるよりも、この作品から400字分を抜粋してそのまま持ってきた方が遥かに宣伝になることは自覚しつつ、拙い紹介をさせていただきます。タイトル通り、この作者様は天才で、この作品はセンスの塊だと僕は思います。文学の完成形は音楽なのかもしれない。そんな境地へと誘うのは、テンポよくリズミカルに繰り出され、人間の業、そして恋愛を苦悩と甘美の入り混じった表情豊かなメロディーで描き出す文章です。プレリュードからフィナーレまで、起伏のあるストーリーが、聴衆を掴んで離しません。やはり僕が駄文を連ねるよりも、コピペした方が良いですね。僕の好きな描写をどうぞ↓ 男は乾いた風の匂いがする。それは男が何物にも縛られない、自由を愛するものだからだろうか。そこかよ!とツッコまれそうな地味な部分ですが、僕はこの描写がたまらなく好きです。
この作品に出てくるものは「男」と「女」、「東国」と「西国」会話文を一切排除したことによる完璧すぎる世界。うーん…なんか堅苦しそう、すごくカッコイイけど話が難しいんじゃないかな?私もそうでした。漢字とか古典とかだったらどうしよう……。しかしそんな不安なんて全く要りません。最初の1ページ目、1行目から、卓越した語彙力と安定の文章がグイグイ世界に引き込んでくれます。……なんてこった、気がついたら全部読みきっていた!!時間を忘れて読み耽りが出来る美しい世界。「男装の麗人」これだけでハッピーになれます。堪りません。この纏め方、そして最高の読了感!こちらを読み終えた後は小話も是非。読めば読むほど何度も美味しい作品に仕上がっております。作者様は「天才か!?」と思わず呟きたくなるこの余計なものを省いた語彙力と作風は誰もが酔いしれるはず。まずは一読を。そしてハッピーに。