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 永禄6年(1563年)、織田信長は手狭になった清洲城を引き払い、尾張平野のこんもりした小山、小牧山に城を築いて永禄10年(1567年)まで居住する。
 この城替えは宿敵である斉藤龍興を睨んだ戦略であると同時に、信長の城作りや町作りのレッスンだったとも言われている。旧弊にとらわれない発想で目的を優先し、合理性を極めた結果、小牧山城は近代築城術の先駆けとなり、小牧城下町は近代城下町造営のモデルケースとなった。
 これらが明らかになったのは近年の研究の成果だが、一方で、草に埋もれたままの秘伝が、いまもなお小牧の津々浦々でひっそりと語り継がれている。それこそが信長在住時に端を発するキツネ伝説であり、吉五郎礼賛秘話である。
 本書は聞き得たかぎりでの吉五郎伝説をまとめた小編である。なにぶん450年以上前の出来事の伝聞なので、辻褄の合わないところや突拍子もない荒唐無稽な逸話も差し挟まれている。そこはそれ、想像力を駆使し、妄想をたくましくして補うほかはない。実際わたしはそうした。
 以下は本編のあらすじである。すでにあらすじからして、なにやら、うさんくさい気が漂っているが、この物語は小牧の人々によって語り継がれてきた一片の真実を、広くあまねく高らかに謳うものである。

『時は戦国時代。尾張平野のただ中に、こんもりとした小山があった。その山にはキツネが住んでおり、親分の名を吉五郎といった。同じころ尾張で敵なしの武将が、そのキツネたちの山に城を築こうと向かっていた。織田信長である。状況を見極めるや吉五郎たちはやむなく山を降りた。
 山の木々は伐採され、山じゅうに武家屋敷が建てられ、さらに山の北側の原野が切り開かれて城下町が整備された。
 信長は町を整えると、宿敵の斎藤方に味方している織田信清の犬山城へ出陣した。その帰り、あるはずのない城が小牧の草原に出現していた。これこそ、キツネの吉五郎たちが渾身の力で築いた幻の城だった。キツネたちの逆襲が始まる。
 信長が苦境に立たされたと思い込んだ京都の公家は、陰陽師《おんみょうじ》の安倍|晴雨《せいう》をつかわし、同盟者の徳川家康は、キツネ退治にたぬきを寄越すと言ってきた。京の連歌師《れんがし》、紹巴《じょうは》もトリックスターとして活躍。町衆も巻き込んでの大騒動が始まる』
 
本作は『エブリスタ』『カクヨム』に重複投稿してあります。


話数:全16話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
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職業・種族
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時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

注意:全年齢対象