評価:★★★★☆ 4.3
長く続いた帝国の衰退期、治安の崩壊した北部辺境では闇の獣が人々の生活を脅かしていた。粉屋の少年フィニアスは家族と共に風車小屋を離れ、山賊化した軍団兵が支配する町へ避難する。だがそこにもまともな暮らしは無かった。一人の少年が家族や仲間と支え合いながら、安全と平穏を求めてさすらった末に故郷を再建するまでの物語。
※個人サイトから転載。『閑話』は読まなくても支障ない番外です。
※書籍化に伴い、各部の幕間と補遺を削除。ウェブ版との差異詳細等は個人サイトの方に書いております。(2014/6/13)
話数:全208話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
末端の民があずかり知らぬところで、決定的な崩壊を起こした国。 そして、まだ若い竜と絆を結んだ青年のお話。 物語序盤は徐々に近づいてくる破滅の足音と、『闇の獣』による言い知れぬ不安の広がりが、読み手に静かな緊張感をもたらします。……息が詰まる、けれどそれこそがこのダークファンタジーの醍醐味。まずはその独特の雰囲気に浸ってもらいたいところ。 やがて迎える終局は人々にとって不幸であったのか幸福であったのか、閑散とした世界を尻目に闇の獣は低く笑って去っていきます。 読み応えあるファンタジーを求めているなら、読破する価値がある作品。 レビューの最後は物語を象徴する一文をお借りして締めます。 ――行く先に瓦礫の山しかないと知りつつなお進むか。 好きにせよ、灰と化した故郷に己が王国を築くが良いわ―― (灰と王国 第三部:帰還『老いたりと若きと』より抜粋)
感想を書いただけでは飽き足らず、レビューにもお邪魔させていただきました。そうさせるだけの力が、この作品にはありました。あなたは感じたことがありますか? 命すら奪われるほどの恐怖を。あなたは想ったことがありますか? 存在全てを包み込んでしまうくらいの深い愛を。あなたは願ったことがありますか? 心からの安寧と安からか日々を。私はどれもありません。しかし、この作品を通して、人が生きるために、もがき、抗い、助け、愛すことの尊さを感じました。人の生きる力を感じました。作品の中に確かに生きているキャラクター達の生き方や想いが、それを読む私たちの心を震わせていきます。壮大な世界観と確かな文章力、そこから紡ぎだされる物語の数々に、あなたは必ず没頭することでしょう。まずは、読んでください。そうすれば、目の前に確かな世界が広がっていきます。