評価:★★★★☆ 3.8
「異世界? ある訳無いだろ……」
あの子とそんな話をしたのはいつだっただろうか。
それから1年間、少年は悲しみを背負いながら数学に没頭した。しかし、悲劇は彼にも降りかかる。
目覚めた先は『魔法』という概念が存在する異世界。
何から何まで科学で証明ができない!!そんな彼が得たのは、魔法を分析する『逆演算』の力だった。
そして、少年を助けた不思議な少女の正体は……。
話数:全68話
ジャンル:アドベンチャー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
僭越ながら、この作品を、ケーキに例えさせていただくと、フルーツたっぷりのチョコレートケーキの味わいがある。 ケーキのように、いろんな要素が詰め込まれて調和された味わいのある作品。 ヒロイン達とのどこかもどかしさもあるやり取りが、甘いんだけど、甘すぎず、どこか爽やかな風味がある。そう、まるでフルーツのように。 そして魔法の設定がカカオ多目のチョコレートのように大人向けの複雑な風味を醸し出し、物語全体を取り巻く程よい苦味となっている。 その調和が飽きない味わいへと昇華されている良作。
あらすじにも書かれている、主人公の『逆演算』という能力。初めは「何だ、よくある打ち消し系か」と思っていました。ですが、読んでみるとその凄さがよく分かります。ただ打ち消しているだけではないことを。主人公が理系ということもあるのか、設定がとても詳しく書かれています。「異世界だから」で片付けてしまうこともできる魔法も、発生する原理からギッシリと。主人公の推理・考察シーンは圧巻です。また各章にある、キャラクター達の過去編。異世界転生なのに、生きていたころの経験が物語にリンクするのです。過去と現実が噛み合った時、感動を覚えました。何といっても途中で挟まれる理系ネタがこの作品の特徴でしょう。途中にあった挿絵(と言っていいのか分からない)には驚きが隠せませんでした。ぜひ、読んでみて下さい。