魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。

　三十代。ひとり暮らしの未婚女子。趣味は人形（ドール）を愛でること。自分の名前と顔と性格が嫌いな「彼女」は火事に巻き込まれて現世での命を失った。
　次に目覚めた先は、小説の中のような完全ファンタジー世界。「生前の彼女の姿」を模した巨大な魔女の見せる鏡に映ったのは、見目美しい人形が動いて驚く光景だった。
　魔法の人形に転生した「彼女」は罰を受ける咎人のような気持ちで日々を過ごす。
　魔女との度重なる口論で自己嫌悪の殻を破ることができた。
　マリーという貴族令嬢との友誼で自身の価値を見出すことができた。
　マリーのくれたイオという新しい名前。お屋敷での暮らし。
　ささやかな幸福にたどり着くも、マリーの縁談話が決まる。
　イオに手放しの愛情を向けるマリー。
　マリーの気持ちを受け止めることができなかったイオ。
　魔女との口論の中で浮上したイオ自身の本心と向き合って、彼女は少女の下に戻る。
　遠い年月を経てイオは魔女の住処に帰る。
　見た目の変わらぬ魔女に見守られながら、魔法人形は再び箱の中で眠りに落ちた。