森でサルに拾われた魔人の赤子は神獣の妹達と育って伝説の勇者になる

言葉の通じない動物達に育てられるオリジナル展開が熱いです。愛のある作品で感動して涙が出ます。ハイファンタジーのジャンルにあるけど、どちらかというとヒューマン(アニマル)ドラマの要素が強いです。文字数がそこそこありますが、要所要所に熱いイベントが散りばめられていて、読んでいて飽きません。恥ずかしくなるくらいベタベタな熱さが温度を失わずにそのまま伝わってきて心打たれました。もっと評価されるべき作品です。

いい年した親父が不覚にも涙がでた。大きくいえば、タイトルのとおり「赤子が成長して冒険して勇者になるまでの話」だ。しかし、この作品のポイントはハートフルなところにある。一貫して主人公の一人称で簡潔に書かれる文は、共感し易く自然と感情移入できる。冒険や戦闘の要素ももちろん楽しめるが、とにかく人々の思いやりが暖かくて青臭くて心を揺さぶられる。身の回りの大切な人達に改めて思いを伝えたくなった。

あらすじに書かれている通り、先ずは五話目まで読んで欲しい。そこが前半の山場で、その後のストーリー展開に大きく関わる。あまり書くとネタバレになるので細かくは書けないが、優しいオラウータンに育てられることで、少年の心が大きく成長するという話だ。一人称らしく、主人公の感情を丁寧に書いているので、感情移入が容易で、テンポの良い文章のお陰でスラスラと読めてしまう。特筆すべきは、この作者の描くヒューマンドラマだろう。家族が増えるにつれて、更に家族の絆が深まり、それに比例して物語がより深くなっていく。疲れた時に読んでほしい。きっと、あなたの心を解してくれるはずだ。