※本編『もれなく天使がついてきます!』の外伝です。
本編から、時を遡ること三十余年。
その時代がこの物語の舞台である。
その頃、イーシスという星の世界では、数々の国同士が長い長い小競合いを続けて、既に百年以上が経ち、停滞期に入り始めていた。時はさらに遡り、各国の小競り合いが始まった頃、人間、ホビット、エルフの数ヵ国は、互いに新しい共存世界の思想を掲げ、三種族同盟を締結した。
しかし、小競合いが始まって六十余年を数えた頃には、三種族同名も一部を残して解散し、各国はそれぞれ独自の文化を主張し始め、国はいくつもの地域毎に分散、次々に新しく建国していった。
東西大陸では六十二ヵ国に及ぶ国に別れ、中にはリザードマンやハーピー、オーガやドワーフ達の領土、あるいは国家が自治権を主張し始めた。
同じ頃、三種族同盟も遂に人間三カ国とホビット二カ国、エルフ二カ国の七国のみとなる。
その七国は、世界の平和を目指す同盟をこれ以上崩さないためにも、それぞれが強固な共同国、連盟国であることを誇示する意味を込め、互いの国の危機に、共に守り抜くという条約の元、守護七天という連盟の証を設立した。
それは、其々の国で一騎当千と呼べるその国最強の猛者を一名ずつ選出し、同盟国が有事の際、その者を各国から派遣し、これを鎮圧するものだった。
その圧倒的な武力は、たった七騎で一万の大軍を壊滅させたと言う。
その脅威は近隣諸国を圧倒し、三種族同盟の周りの国々が結束し、三種族同盟の国々に対抗するようになる。
そして、小競り合いが始まって百年に達しようかという頃、守護七天の結束も弱まり、エルフとホビットの国が一つずつ自国の防衛を優先するために同盟を離脱。
五国のみとなった三種族同盟は、守護五天となった同盟の証も脅威を削がれ、近隣諸国の結束も瓦解。
世界の情勢は長い停滞期へと突入するのだった。これは、その守護五天の一角を七代に渡って受け継いできた名家の、息子として生まれた一人の小さき男が、家柄や伝統に向き合うという運命に翻弄されながら、自由を探す物語である。
―――この物語を、イーシスの固有名詞以外は読み手の言語に翻訳して語ろう。
そして、読み手が楽しんでもらえることを祈る―――――― 刻の語り部 ―――
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