評価:★★★★☆ 4.2
軌跡は誰の足下にも残る。歩みを止めぬ者たちは皆、それぞれの軌跡を残して進む。人間の価値は歩んできた軌跡で決まる。
これはただ一人の誰でもない少年が歩もうとする軌跡を描く。ただそれだけの物語。
日常を。青春を。人生を。
今日も一日が始まっていく。—- —- —- —- —-
この小説は「カクヨム」にも投稿しています。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882752095
話数:全20話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
その他要素
注意:全年齢対象
言葉の一つ一つが水の底に沈んでいくような静謐な文体は、沁みこんでいくようでした。 思春期の心情――腹ん中で真水と油が同居しはじめたかのような、瑞々しさと物憂さが綯い交ぜになった視覚。彼等の瞳に映った世相が写実的に表されて、胸の奥がねじり絞られるような切なさや、煌びやかな四季の移ろい、微かな戸惑いが想起されます。 「自分」と「他人」に仕分けた世界の中で、春野桜のディティールはくっきりと映し出され、静かに、それでも時を重ねるほどに強く惹かれ合っていく二人が美しい。 こうも郷愁に駆られるのは、底打ちされた描写があってこそでしょう。言葉数が少なくとも鮮明にイメージが浮かぶのは、それだけ語彙を厳選されたから、と愚考しています。 じっくりと読み進めたいと感じる作品でした。