切っ掛けは些細なことの積み重ねだ。僕はその日、上司に怒られ、密かに好意を寄せている平岡さんが彼氏と思われる人物と喋っているところを目撃し、コンビニで馴染みの店員から『パスタさん』とあだ名をつけられていることに気づき落ち込んでいた。
ことこうなっては、もう自殺をするしかないと思い立ち、縄を手に取りカーテン掛けにぶら下がろうとする。
ところがその時不思議なことがおこった。
アパートのチャイムを鳴らす者がいる。
時間は夜の十二時だ。
誰だろうと不気味に思い、僕はアパートの扉を開く。
そこにいたのは三匹のリトル・グレイだった。
そこから僕の平凡であった生活は一変する。
はじめ、僕はこのリトル・グレイ達が僕の内臓をキャトル・ミューティレーションするために家を訪問してきたのかと警戒をした。
自分の身を守る為に僕は、家にバルサンを焚いたり、警察に電話をかけたり、猛獣のような隣人に追い払ってくれるよう頼みこんだりまでした。
しかし、どんなにやっても三匹のリトル・グレイ達は外に出て行ってくれない。
そんなすったもんだの挙句に気づいたことなのだが、どうやらこの三匹のリトル・グレイ達は僕に対して敵意が無いようである。
試しにハンバーグを食べさせると大いに喜び、僕はこの宇宙からの訪問者の真意に頭を悩ませることになった。
僕は彼らの背がちっちゃいこともあり、しょうがなく彼らを保護することにした。
三匹のリトル・グレイ達との奇妙な共同生活は実に楽しいものだった。まず彼らは生のタマネギが大好きだ。そして日本語を覚える知性がある。雨を見たことが無いらしい。なぜかコンビニのビニール傘を大変怖がる。
その間にも、僕は気の進まない日常生活を送らなければならないこともあり、嫌々会社に行っていた。ところが、彼らの世話をしている内に、僕の中で何かが変わってしまったようだ。
まず口うるさい上司と適度な付き合いができるようになった。そして思い焦がれていた平岡さんと仲良くなることができた。挙句にはあだ名をつけられたコンビニにまた行けるようになってしまった。
僕は思う。このような棚からぼたもちで手にれた幸せは長くは続くまいと。そして、その予感は的中する。
【カクヨム】にも掲載中
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