評価:★★★★☆ 4.1
原稿用紙と万年筆、それから──小説家。
それらのある部屋に入り浸っている猫──『私』はそれらが揃っている部屋で過ごすのがお気に入り。しかしある日、『私』が散歩で聞き拾ってきた『人形』の話に小説家が興味を持ってしまう。小説家はその『人形』を見てみたいと言い出して『私』を連れ出し連れ回し──
そんな、猫が小説家に振り回されるお話。
話数:全11話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
猫と話せる好奇心旺盛な小説家と、それに振り回される猫の『私』という、一見すると奇妙な構図の、異風ながらも面白い小説です。 気が向いた時に猫の私が小説家と話し、紙の上に万年筆を走らせる。 部屋の中で穏やかな時間を過ごすのが、猫は気に入っているのでした。 本当に謎なのですが、猫である私は、この小説家としか話せません。 猫と小説家でタッグを組んで、とある謎を解くために、調査を始めるのでした。 登場人物達のトークがとても自然体で、滑らかにストーリが進展していきます。物語構成が凄く良くて、先の展開が気になって、面白くスムーズに読み進めていける作品です。 猫の視点から物語が進行していくのが、とても不思議な感覚の作品です。しかし、ソコがこの作品のーのミソであり、面白い所なのです。 更に、本格的な推理小説として、謎を解いていく楽しさもあります。ぜひ、ご覧になって下さい。
往年の、かの名作を彷彿させる、主人公「猫」目線のこの作品。文章から流れる、その往年の古き良き空気感がたまりません。この空気を醸し出す筆力もさる事ながら、特筆すべきなのは、やはり物語の流れの緻密さ。何気ない、私小説のような冒頭。そして、主人公「私」と唯一会話できる小説家の青年。彼の好奇心に振り回される猫――「私」。わがままな猫に振り回される人間、ではなく、人間の好奇心に振り回される猫、という絶妙な構図は秀逸という他ありません。ホームズ作品におけるワトソンの立ち位置に猫を据え、謎の「人形」の秘密を追う、珠玉の推理小説。読み始めたら、やめられませんよ。
猫と話せる『小説家』と、その同居猫である『猫』が織り成す、和風で綺麗で、少し不気味な物語。基本的には『猫』の視点で物語が進むのだが、文章の節々に“歳をとった猫”と言う雰囲気が醸し出されており、かつ彼が見る『小説家』と言う人間像が、それはそれはとにかく不気味で不思議。“不気味”と言う描写を多用しているこのレビューだが、物語前半ではそう言った感じはあまりせず、昭和モダンな文章が和を感じさせる創りとなっている。筆者がこの物語の象徴に“不気味”を選んだ理由、それは、最終話の最後にて『小説家』が放った一言だ。あまり詳しく言うとネタバレになるため控えるが、これまで、ある種『人形と云うファンタジー』が生み出していた“幻想”から、一気に“現実”を想わせる魅力的過ぎる物である。文字数自体も少なく、一話あたりも短い。万人受けはせずとも、筆者としては是非読んで頂きたい作品だった。
1人の小説家の家に住みつく猫。 唯一この猫と会話ができる、小説家。 自由奔放なこのコンビが織りなすは、ちょっぴり不思議な物語。 ある日、猫が少し怪しい噂話を聞いて帰ってくる。その噂話を聞いた小説家は、普段からは考えられない行動力をもって、その真相を突き止めようとするのだが……。 この作品を読んで一番最初に感じたのが、『とても雰囲気のある本物の小説』というものだった。 というのも、このコンビの絶妙な関係性がなんとも堪らない。そして主人公の語り口がとても味わい深く、不思議な世界観を演出している。 また『猫』と『小説家』という2つの相性の良さも際立つ。 それを可能にしているのは、筆者の筆力の高さに他ならない。 最後の終わらせ方も見事で、読者にその後を想像させる。 非常に読み応えのある本物の小説。 あなたを満足させる自信が私にはあります。
主人公の視点がとにかく新鮮です。よんだら、「え?」となること間違いないと思います。その後の会話も素晴らしいです。まったく違和感がなくて、なおかつその会話の主が大人びているというか、こういった喋り方をするだろうな、と想像できます。最後も良いですね。姉の願いを叶えた店主ですが、店主にとってはそれは荷が重かったのでしょうね。小説家の最後の一言も良かったです。