評価:★★★★☆ 4.1
第14回小説現代長編新人賞の二次選考を突破作品
不死身狂四狼という不良は己の無学さを恥じていた。そこへ塾を経営している柳生楓という女が現れ、勉学に励む。そして努力の結果、学生になるという新しい目標を楓に示して貰った。狂四狼は楓に感謝すると共に恋心を持つ。
しかし戦争が始まる。戦況が悪くなり本土決戦が始まると、狂四狼は徴兵されぬように楓に匿われて生活していた。しかし幸せはいつまでも続かない。狂四狼は日本軍中将の久我という男に謎の薬物を投与され、更に軍に入るよう強要される。そして久我は入隊するための試験を受けるように迫った。その試験とは楓を狂四狼自身の手で殺させることだった。狂四狼は極度の疲労と生存したいという願望から、錯乱した後に夜桜の咲き誇る中で楓を殺してしまう。激しい絶望で感情を昂らせたその時、狂四狼は全身に黒い装甲をまとう一体の異形の武者に変身した。
これは修羅道に落ちた不死身狂四狼の救済の物語である。
話数:全20話
ジャンル:異能バトル
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
この作品、ただ、渋い。このひとことに尽きるでしょう。愛する女をこの手で殺め、異形の力を得た男の人生を鋭利な筆先で見事に描き切る本作、圧巻です。舞台は疑似日本。疑似第二次世界大戦とその戦後。文章は非常に格式高く、それだけで情景が思い浮かぶほどに鮮やかです。「変身」という能力を得た男は、強い。とにかく、強い。これでもか、と綴られる戦闘シーンには読んでいるこちらが思わず息を飲み、先へ先へと読み進めてしまう何かがあります。完全に中毒です。しかしながらこの男、無敵ではない。完璧でもない。その内で思い悩み、苦しみ、幸せを渇望する。人間臭い。かっこいい。ラストの余韻まで美味しい作品です。どうぞ、ご堪能あれ。
愛する人を己が手にかけてしまった男はただの虐殺装置と成り果てる痛みもなく迷いもなく、暴力は美しいと嘯き義なき殺戮を繰り返す己は裁かれるべきもの、死すべき者と、そう呟きながら軍の思惑に翻弄され、狂イシ先に見るものは?その生涯に一体何を見出すか、何を成すのか陽だまりを見出そうとも過去の因縁はお前を逃さないさあ走れ奔れ、血の一滴までも絞り出して燃やし尽くせ、その身果つるまで