学蘭の魔法使いとスーツの魔王

この現代には本当は魔法や異世界転生、転移などない。そんな常識が受け入れられない少年が居た。転生や転移の類は他者の意思が絡む為に無理だとしても魔法はどうにかすれば使えないのかと少年──星都ソラは苦悩の日々を送る。少年が出した答えは、せめて夢の中だけでも魔法を使いたいという答えだった。夢日記を綴れば夢を操れると知ったソラは、日々日記を綴り、夢の中で魔法を体現していく。
自分の見知る場所の空を飛び、手から炎を出し、氷を出し、雷を泳がせた。しかし欲飽きず、ソラは魔法を現実に反映させられないかと考えるのだった。とある事件をきっかけにソラは閃きを宿す。夢の日記を綴れば夢を操作できる。では現実の日記を夢の中で綴ればどうだろう、と──。天啓を受けたようにソラは魔法を手にするが、待っていたのは歓喜ではなく地獄だった。
他にもソラと同じことを考えた者が特殊な能力を手にし、その能力を人殺しへと使用した。その能力は新宿を草原へと変え、ゴブリンを放ち、池袋を森林世界へと変えるといった──まるで現実をRPGの世界で誘う能力だった。
この現代においてそんな馬鹿げた能力を手にするのは夢世界を介しているに違いないと踏んだソラは、魔王が掲げる人類抹殺を阻もうと立ち上がる────。

ゲームやアニメに生き甲斐を見出し、周囲に溶け込み切れない若者が現代の冷たさに苦しみにながらも自分の居場所を探していくローファンタジー。