青の果てにクジラは歌う

「人が、一生の内で最も後悔する瞬間は、何だと思う？」
　この世とあの世の境目に、背負ったものに耐えきれず行き場を失くした者たちの行きつく異界の海があった。その海の最も奥にある扉を開くことが出来れば、一つだけ願いを叶えられるという。
　ただし、死人を生き返らせることは出来ない。
　そして海の奥にある扉を開ける為には鍵を完成させねばならず、鍵を完成させるには海の主である鯨の人から役目を与えられた者たちの問いに答えなけばならない。
　四年前、溺れた自分を助けようとして死んでしまった双子の姉を救う為に、少女――七瀬はフクロウ男――ワタリと海の底を渡る旅へ出る。
　境界を踏み越え続けてしまった老人の住む貝殻の家、死んだ者たちに囚われ続ける人魚達の棲む塔、耐えがたい怨みと憎しみに満ちた沈没船を巡り、ワタリに支えられつつ、傷つき悩みながら七瀬は自分と向き合っていく。

――これは失ったものに、もう一度出会う物語。