異世界リボルバー　　～西の辺境で銃使いに転身した転生者達の冒険譚～

　競馬の騎手を務めていた俺はレース中の落馬事故で即死、気づけばこの世界の草原に横たわっていた。
　この世界には俺と同じような転生者が多くいる。
　彼らの建てた国、滅ぼした魔王の眷属は数知れず。今やこの世界は転生者によって支配されていると言っても過言ではない。
　俺は馬に乗る術だけは心得ていたがせいぜいそれまで、この辺境に流れ着いて数年が経った。
　
　ここ西部は未だ未踏査地域と呼ばれる不毛の地。蛮族、悪漢、猛獣巨獣ひしめく荒野が殆どだ。
　北の帝国のような統治機構も無く、東方のように武勲を立てる程の国家も人口も足りない。
　他の地域からあぶれた流れの冒険者が町に居座り、保安官気どりで治安を守っている。
　が、こんな辺境に辿り着いた転生者は所詮は二流スキルの持ち主ばかり。
　そして、かくいう俺もその一人に過ぎない。
　この世界では強い者だけが成り上がれる。優れた素質ある者は簡単に人脈も作れるし成功できる。
　転生したての頃に魔族との戦いでそれを痛感した俺は、この世界で成り上がるという野心を捨てた。
　そして、今では西の荒野で気ままに暮らしている。
　バイソン狩り。しょぼいならず者の討伐、そして人助け……上位クラスの転生者にはどれも取るに足らない英雄譚とは程遠いクエストばかり。
　だが、そうやって俺はこの世界で生きてきたのだ――十五年もの間、ずっと。