演劇の初夏

　都立光耀高校二年生の矢井田翔斗は、名ばかりでろくな活動もしていない演劇部の部長。部員は七人で、彼のほかには、お淑やかな泉春子、童顔で可愛らしい早瀬有希、活発で男勝りな村越光代、所謂腐女子系の望月ゆみ、引っ込み思案の小林佑也、強面で面倒臭がりな橋谷武という面々。毎日自由気ままに過ごすのにも飽きてきた頃、村越が演劇をやってみようと提案し、他のメンバーも賛成した。
　そんな折、部員の一人、泉春子が突然柄の悪い上級生の男子生徒に絡まれてしまう。特に何をされるわけでもなかったが、声を掛けられた理由も分からず、部員たちは心配になり、なるべく近づかないようにと泉へ注意を促す。
　その翌日、校内で一人の男子生徒が自身のネクタイで首を絞められて殺されているのが発見される。その生徒は、先日泉に絡んできたあの男だった――。

――演劇の初夏。タイトルをつけるなら、そんなところだろうか。
　誰に見せるわけでもない、喜劇と悲劇の物語。それが、俺達の初夏――。

※八年前に執筆した作品のため、舞台設定が平成二十二年になっております。ご了承ください。