評価:★★★★☆ 4.1
「ずっと前から、あなたのことを探していました!」
偶然目の前に現れた芸能界の歌姫はオレにそう告げた。
なぜ? オレって三十歳のタダのしがない銀行員なんだけど。そんな突然の出会いに、美人だがひとクセある先輩行員やドジっ子な後輩行員も絡んできて、惰性運転のようだった日常がだんだんと色づいて見えてくる……
人は、過去の辛い出来事を乗り越え、未来を見つめることができるーーそんなメッセージを作品から伝えられたらと思っています。
続編「歌姫と銀行員 第二幕 ~二人の恋の協奏曲~」もよろしくお願いします。
話数:全19話
ジャンル:ラブコメ
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
夢小説、という古い小説がある。好きなキャラクターとの妄想を物語にして、自分の名前を入れることで、自分のそのキャラクターの恋愛を感情移入して楽しむことのできるWeb小説が走り始めたころから存在する小説のジャンル。一見すると、「歌姫と銀行員」も、そのように見えるかもしれない。シンガーソングライターの歌姫と、クールな銀行員の恋で形作られているからだ。なら、中身はどうだろう。伝わってくるのは、確かに作者様のヒロイン(とそのモデル)を好きということももちろんあるけれど、それ以上にその好きな人の夢を応援したいという気持ちだ。夢を追いかける人が好きな作者様も心である。まるで夢見る人へのエールのように。だから、あなたが挫けそうで、夢を諦めそうになったとき、このお話を読むといい。夢を思い描いたころの、あのキラキラした気持ちを思い出して、もう一歩だけ先に進む勇気をもらえるはずだから。
まず当たり前の話なのですがこれは恋愛小説です。そしてそれが、どうしてこんなにも心を揺さぶるほど痛快なのかをお話いたします。そもそも恋愛とはなんなのか。恋愛とは人が持つさまざまな行動原理の一部ではないだろうか。ほかのことに目を向けず、恋愛だけしているような乙女脳じゃ、世の中は生きていけません。主人公は銀行員。ヒロインはシンガーソングライター。一見なんの繋がりと無いように見えるふたりは、物語の中で必死に生き、さまざまな経験をし、過去現在とさまざまなドラマの末、恋に落ちます。世にお仕事小説というものがありますが、そんな生活の息吹を書ききることに一片の手も抜かず、時に複雑な人間模様を描き、時に銀行員の知略を活かしたコンゲームも真っ青の頭脳戦を描き、時に近年の音楽業界を冷静に分析する。そしてそのど真ん中に歌姫と銀行員の狂おしいような恋愛があるのです。面白くないはずがない。
「実は私は、あのとき助けていただいた鶴です」そんなおとぎ話をご存知でしょうか。おじいさんが困っていた鶴を助けたら、働き者の娘さんがやってきて……というようなお話だったと思います。この「歌姫と銀行員」は、とある場末の銀行員が、路上ライブ中に絡まれている女の子を助けるところからはじまります。しばらくして再会したとき、その女の子は、なんと売り出し中のシンガーソングライターになっていたのでした。そこからはじまる、二人の関係。鶴を助けたお話では、最終的に鶴はおじいさんの元を去っていってしまいますが……さてさて、このシンガーソングライターと銀行員の向かう結末は?誰もが一度は憧れる、夢たっぷりのキラキラ恋愛物語!どうぞ、二人のたどり着くところを、あなたの目でお確かめください。
主人公は場末の支店に勤める銀行員。場末、とか自分で書いてしまうあたり、なんだか世を拗ねている。どうやら過去に何かあったらしい。そしてヒロインはシンガーソングライター。出逢った当初こそ路上ライブしてたりするけど、物語の進行に合わせて時の人となっていく。こんな二人で恋愛が成立するの?という私の疑問は杞憂に終わり、徐々に縮まる二人の距離。そして、良い雰囲気になってきたと思ったら…… この後は本編でのお楽しみ。これが作者の第一作とはとても思えない筆致で、安心して没頭出来る。作品への愛情が牽引するスピーディな展開、輝く様な魅力を放つヒロイン、傍に配された個性的な人物達の群像劇。これに後半になると、作者のバンカーとしての経験に裏打ちされたエピソードが嫌味なく絡んでくる。これで面白くない訳がないんですよ。恋愛小説が苦手な私でも思わずオススメしてしまう本作、貴方にも是非手に取ってみて欲しい。
一般のサラリーマンと、歌姫様の恋愛。それだけであれば、芸能界あるある、で終わってしまうだろう。よくある芸能人と、一般人Aが付き合ったと。が、本作は全く違う。主人公の佐伯の心に抱える闇が描写されており、ただカッコイイ主人公ではない。人間らしいその生き様には共感さえ覚える。また彼の銀行員としての仕事で、華麗に歌姫を窮地から救う。まさにピンチの歌姫にとっての彼は白馬の王子様(作者様の別作品にございます)人を好きになる感情はそれぞれであるが、この二人の少しずつ距離を詰めていく関係性は読むと、時にじれったくなり、それでいて心の底から応援したくなること間違いない。是非ドラマとして見て見たい作品の一つであろう。勿論、作者様が敬愛する方で実写となることを期待したい。続編にて二人の恋楽章の続きが読めるので、余韻に浸った後は次の作品でまた。
主人公はどこにでもいる一般銀行員である。そんな彼が再開を果たしたのは、今巷で有名な歌姫であった。主人公もヒロインも個性があり、それぞれの感情表現が上手くできていると思います。周囲の人たちも彼らを輝かせるように動き(そう感じた)、二人は困難を乗り越えていく。ほっこりとしているけれどしっかりとした人間ドラマがあるので、小説でありながらリアルなのでは?と、錯覚してしまう。ありそうでなかった設定なので、斬新さを求める方にはちょうどいいかと。
銀行員と歌姫だなんて、なんてリアル感のないカップリングなのだと思うかもしれない。しかし、本作品に限っては違う。銀行員の佐伯さんと、歌姫であるminaは、確かに血の通った人間で、それぞれが抱える過去や思いが大変立体的な形で読者に訴えかけてくる。そして、春風のようなナチュラルさで2人の関わりは深まっていく。物語の語り口もとても読みやすく、一気読み間違いなし。脇役キャラクターも味があるので、恋愛小説が苦手という方も、男女問わずに楽しめるのではないだろうか。住む世界が違う2人が、まるで運命かのようにどんどん引き寄せられていくのを是非とも見守ってほしい。立ち塞がる困難も、2人はそれぞれの持ち味を活かして支え合い、乗り越えていく様は本当にほっこりするし、キュンっとさせられる。お仕事モノとしても優秀だ。
……ことが作中の至る所から感じ取れる恋愛小説。作家なら多少は気にするであろうベンチマーキングや流行への媚びは微塵も無く、誰よりも作者にとっての「好き」が、登場人物たちを画面いっぱいに輝かせている。その素直な表現にとても好感を持った。サラリーマンの主人公と芸能人ヒロイン。格差恋愛かと思いきや、決してそうではない。作者の分身とも言える主人公の佐伯は、過去に闇を抱えながらも相当なキレ者で、実際に銀行員としてヒロインの窮地を救う。その辺りはビジネス物として読んでも爽快且つ格好いい。他にも銀行の裏話が覗き見できたり、強烈な個性のキャラが登場したりと、見所がたくさん。完結済みだが前日譚や続編の別作もあるので、より広く深く物語を堪能できる。そして気がつけば、読者たる自分(男)もヒロインに惚れていた。これは是非ドラマ化してほしい。ヒロイン役は勿論、あの人だ。