評価:★★★★☆ 3.9
1908年――。
突如、地球上に未知のエネルギーが出現した。
はじめは目に見えず形も持たなかったエネルギーだったが、人類の負の感情と誰もが知っている著名な物語の影響を受け、醜い怪物『ワード』が誕生する。
時同じくして物語を模した力を持つ異能者『グリムハンズ』が現れ、ワードとグリムハンズの熾烈な戦いが幕を開けた。そして時は2018年――。
彩桜高校の教師『如月正太郎』は、グリムハンズの少年少女が在籍する同好会『童話研究会』の顧問だった。
正太郎は、自分のクラスの生徒『沙月エリカ』を童話研究会に勧誘する。
彼女は、幼い頃ワードに家族を惨殺されていたのだ。
正太郎の指導でグリムハンズに覚醒したエリカは、両親の仇を討ち、童話研究会のメンバーとなる。
しかし驚異的な力を持つワード『神災級(ドラゴンクラス)』の復活が目前に迫り、正太郎率いる童話研究会のメンバーは世界の命運をかけた戦いに挑む。【参考文献】グリム兄弟(1999)『完訳 グリム童話Ⅰ さようなら魔法使いのお婆さん 』(関 敬吾・川端豊彦=訳)KADOKAWA.
話数:全47話
ジャンル:異能バトル
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
この作品は童話のモチーフが含まれています。ですが童話というにはあまりにも残酷で美しいです。内容は童話研究会という同好会の活動を描いたもの。ジャンルとしては学園ファンタジー系です。その学園ファンタジーの中に大筋となるストーリー、個人の過去や能力に関するストーリーが絡み合ってこの作品は形作られているようです。さらに、随所で繰り広げられる人間ドラマ。これも主人公たちの性格と過去があったからこそでしょう。重厚なグリムハンズの世界をあなたに。
深更の月明かりに浸る古びた図書館が一つある。 ため息が出てしまうような一節から始まる物語を誰にも止めることはできない。予め存在する物語に対して物語を創作するには「物語」という大きな想像力への愛が不可欠である。 童話というものが実は残酷であったという事は既に多くの人に知られているが、プロップによって類型化がなされたことはあまり知られていない。 勇んで言うと『グリムハンズ』とは類型化の極致である。数々の童話がキャラクターあるいは異能に凝縮されて縦横無尽にかけめぐる(それは単なる運動だけを指さない)。 人々の想像力を乗せた童話を一挙に眺めることのできるこの作品を贅沢な物語と言わずになんという。物語の源泉を掘り尽くしてしまった本作品を読む者に残された唯一の贅沢、それはため息をつきながら頁をめくることだけである。
“能力自体にドラマをつけるなど想像できるか?物語をモチーフとした怪物に、同じ起源を持つ異能。童話の、小説の、神話の。そんな一節から生まれた力。解釈の数が力であり、現実に物語を再現させる能力である自身の力に向き合うことで、全てのキャラが濃厚なドラマを持っている一般には知られていない力。全ての能力者が、それを正しく制御できるはずがない。能力で家族を失った者、能力に振り回される者。各々が重い過去を乗り越え、力持つ者の責務を果たしている活動を通して紡がれていく、人の輪が生むヒューマンドラマ魅力的な””生きた””キャラ同士が、ぶつかり、理解し、尊重し合う関係。その繋がりは学園だけでなく、警察、海外と広がりを生むそんなドラマを内包するのは、死角のない美しい物語敵の能力を推察する、推理要素。敵と戦う、戦闘要素。そこに3重のドラマが加わり、文量以上の感動が約束されている”
本作は、「グリムハンズ」と呼ばれる異能力を用いて、物語から生まれた怪物「ワード」と戦う、学園異能力ファンタジー。 主人公の少女は、幼い頃よりなぜか火事に纏わる事故に見舞われ続けてきた。それが己の持つ異能のせいだと知らされる。過酷な運命を背負いながらも、同じ力を持つ「童話研究会」の仲間と出会い、「ワード」との熾烈戦いに身を投じることに。登場する世界観は細部にわたって作り込まれ、異能と童話を結びつけるアイデアは、魅力的かつ、大変わかりやすい。キャラもしっかりと特徴づけられており、展開されていくストーリーを存分に楽しめるだろう。そして、童話という元来残酷な部分のあるものをテーマに、本作もややダークより。血の匂いが漂うようなグロテスクシーン必見で、極限の迫力が表現されている。異能力ファンタジーに欠かせない要素を詰め込んだ作品。是非ご一読を。