評価:★★★★☆ 4
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。
父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。
町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。
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この小説は「カクヨム」にも投稿されています。
『神送りの夜』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884898291
話数:全116話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
美邦は体の弱い父親と暮らしていた。ある日、父親が末期腎不全になったとき、叔父である啓が美邦と父親の元へ尋ねてきた。啓はもし父親が亡くなったとき、啓が美邦を引き取り、美邦が昔住んでいた平坂町で暮らそうと提案した。しかし、父親は啓の提案を拒否する。病院を出た後、美邦は啓から父親に関する衝撃の事実を告げられる。父が亡くなると、美邦は父親が隠していたことを解き明かすために平坂町に移り住むことになった。どこか引き込まれる文章力で、登場人物の表情やその間の空気がリアルに描かれている。展開もクリアでどこか、不気味な『何か』を感じることが出来るだろう。この物語は衝撃の一作といえる。ぜひ、読んでもらいたい。
web小説で、ホラーのジャンルは幾つも目を通したつもりだったが、とんでもない作品が眠っていた。これほどまでに読み手を、作品の中に引きずり込む物はかつて有っただろうか?緻密に計算されて書かれた文章が素晴らしいことこの上無い。見事に物語の内容と完全にマッチングしている!冒頭を読めば、不気味で癖になる世界観に一瞬で入り込めるだろう。ストーリーに関しても起承転結がしっかりしており、少しずつ真相へと迫っていく緊張感のような物も楽しむことができる。どの観点から見ても、非の打ち所がない素晴らしい作品となっている。ぜひ暇があれば一読を全力でお薦めする。
本作は、幼い頃に住んでいた町へ戻ってきた主人公が、不可解な事件に巻き込まれていくホラー小説。本作の見どころは、古風な文体で描かれる描写表現にある。淡々としながらも、細かく丹念に書きつづられる地の文は、ホラーやミステリーにおける空気感を絶妙に作り上げている。読み進めていくうちに、気づけば主人公に感情移入し、徐々に背後へ忍び寄ってくる謎に対して恐れを抱くような錯覚に陥ってしまうだろう。そして、展開されていくストーリーは実に自然に読者を惹きつける。終末病棟にて、亡くなる直前に父親が隠していた何かを探るため、主人公は幼い頃に住んでいた町へ帰ってきた。しかし、記憶の中に引っかかっている神社について訊ねても、誰もそんな神社などないという。この冒頭部分だけでも読めば、後はページを捲る手が止まらなくなるだろう。とても吸引力のある作品だ。是非ご一読を。