評価:★★★☆☆ 2.5

行きすぎた月日は、哀しければ悲しいほど、辛ければ辛いほど、セピア色になって輝く。
それを美しきものとして、懐かしく思い起こす人がいる。だが、私はそれは違うと思う。
人生の上がり下がりは、潮の干満の如く、他とのかかわりで否応なく生じるものである。
生きとし生けるもの、その波を避けることは出来ず、また波で受けた歪はかならず残る。
 
その歪は樹木の年輪と等しく人に歳を重ねさせ、心の襞となり外皮を厚くして身を守る。
だが人は単に歪を重ねるのではなく、その歪があったという事実を見極めねばならない。
私は思い出のセピア色の写真より、共に生きたという証となる、その事実を認識したい。

私は、会社倒産で職場を去った元上司に手紙を書いた。かなりの時を経て、封書を得た。
綴られたものは私の思ったものではなかった。それは苦悩の発露であったかも知れない。
人の苦悩は様々であり、過去は戻らない。だが私はそれを知りたかったのかも知れない。

上司への手紙、それは私が新たに人生を歩み始めるために必要な、生きる為の証だった。
三神工房
(「エブリスタ」掲載 )


話数:全7話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
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職業・種族
  • 未登録

時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素
注意:全年齢対象