評価:★★★★☆ 4.3
姉の脳を支配している寄生生物『つぶり』。
田螺(たにし)に似た殻を背にもつ、左巻きの舞舞螺(まいまいつぶり)。通称ひだりのつぶりに寄生された者は、脳を支配され20歳までに命を落とす。かわりに得られるものは、つぶりの創りあげた仮想空間での、苦痛のない甘美な夢を見続ける人生だ。目覚めない双子の姉と共にいる妹、百花(ももか)は、なぜなのか母親から徹底的に無視されている。誰も自分を愛してくれない。孤独を感じている百花は、隔離されている病院で、ふたりの先生と知り合うのだった。
温和で真面目な医師。おちゃらけていて、甘えられる療法士。百花の味方になってくれるかと思われた彼らには、百花が想像もしなかったある思惑があった…… 毎日更新。平日7時台。土日休日8時台UP予定。短篇『夢路のつぶり』
中篇『未熟なたまごを持つふたり』と同じ、寄生生物『螺つぶり』をめぐる物語です。本作だけで、独立して読めます。
話数:全15話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
痛みも苦しみもなく、甘く優しい夢の中で数年を過ごし、大人になる前に儚くなる。それは恐ろしいことだとあなたは思いますか? 健やかに暮らしている子どもにとっては、悪夢そのものかもしれません。けれど、現実が悲しみや辛さに満ちた子どもにとっては、夢の世界こそが至上の楽園かもしれないのです。物語の主人公は、「百花(ももか)」という少女。彼女には、「ねむり姫」と父親に呼ばれている双子の姉がいます。姉はその呼び名通り、目覚めぬまま夢を見続けているのです。脳を寄生生物に犯されながら。母親から完全に無視されている百花は愛情を求め、病院の先生たちに心を傾けていきます。けれど、彼らにはとある秘密があったのです。悲しみを乗り越え、生きていくために必要なものは何なのでしょう。忘れられない憎しみか、あるいはすべてを許す優しさか、安らぎを与える愛情か。答えなどないけれど、少女は前に向かって歩くのです。
つぶりという恐ろしい寄生生物がいる。脳に巣食うのだ。つぶりに寄生され、眠ったままになってしまった双子の姉を酷く心配する百花。でも、大好きだったはずの母親も、施設の他の人たちも、誰も彼女のことを見てくれない。無視するのだ。まるで彼女がこの世界から排除されているように。ただ二人だけ、彼女に優しく温かく接する者たちがいる。医者の杉先生と、療法士のオダマキだ。彼らがいるから、百花は孤独の中でも生きていられたのかもしれない。けれども、つぶりの足音がする。ひたりひたりと、脳に迫る。あなたのその現実は、本当にあなたのもの?その先に広がる深く暗い闇の中に何が残っているのだろう。カラスウリさん珠玉のダーク純文学。