評価:★★★★☆ 4.3
あたしは猫である。名前はハナコ。
沖縄の読谷村にある、やちむんの里という沖縄伝統の焼き物の窯元で、店主である下僕と一緒に暮らしている。
下僕は安値で作品を売り飛ばすものだから、明日のあたしの食事代すら怪しい状況だ。
だから、あたしは窯を守るため仕方なく、広い直売スペースの、青や緑に輝く皿や茶わんの間に寝そべっては、客人にこれを買っていきたまえ、と指図するのが趣味である。
ああ、ちなみに、この島には、猫もたくさんいるけれど、猫以外の不思議もたくさんある。死んだ人の魂は能天気にふわふわしているし、妖怪たちも緊張感なくうろうろしている。暖かいところが暮らしやすいのは万物にとって同じなようだ。
このお話は、あたしがこのやちむんの里に来てから巻き込まれた数々の面倒ごとと、そして、あたしがこの里を去るそのときまでのお話である。
話数:全46話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
何かをつくるという行為は、祈りを捧げることに似ている。自身の想いが相手に伝わっているかはわからない。受け取った相手がどう考えているかもわからない。それでも私たちは、心の中から溢れだす想いを形にせずにはいられないのだ。料理を、小説を、絵画を、焼き物を、作らずにはいられない。この物語の主人公は、猫又のハナコ。彼女はあやかしであることを隠し、「やちむん」という沖縄伝統の焼き物の窯元で店番をしつつ暮らしている。お店を訪れるのは、いつも訳ありのお客さまばかり。「祖父が使っていた思い出のカラカラを」「新しい門出にふさわしい結婚式の引き出物を」そう口にしながら、彼らが本当に望んでいるものは目に見える焼き物ではなくて、もっと別のものなのだ。もし家の中に「やちむん」があるという方は、そっとひっくり返してみてほしい。もしかしたらその焼き物には、風変わりなお墨付きがついているかもしれないから。
猫は年ふれば化けるという。 長年、人に愛された身の回りの品も同様。 若くしてなかなかの腕前を持ちながら、愛想がなく閑古鳥が友達だという焼物の女職人。彼女の構える店はよほど彼らにとって居心地が良いらしい。 猫の姐さんが文字通り「招き猫」となって呼び寄せるのは、普通のお客だけではない。やわらかく語られる珠玉のオムニバス、温かい飲み物と一緒にいかがですか?
初レビューです。うみのまぐろさんの作品はたびたび拝見しておりましたが、純文学をはじめとして、次々に新しい作品を生み出す作家さんです。 この作品でも、沖縄らしいほのぼのとした作風の中に、ちくりと読者の胸を刺すものがあります。 ストーリーは、沖縄のやちむんの里にある陶器店の猫が、引きこもりがちな女店主(猫は下僕と呼んでいます)の留守を狙って人に化け、陶器を打ったりするのですが、その猫のものの考え方が猫らしくてとてもシュール! そしてうわばみなので酒を飲みます。猫を飼ったことのある人必見です! また、作者様の描くやちむんへの知識や歴史にも惹かれます。道具が付喪神になったりと、ほのぼのした民間伝承もちらほら。 癒されたい人、猫が好きな人、沖縄に興味がある人必見です。沖縄に旅した気持ちになれる作品だと思います。 読んだ後には疲れも飛んで、また頑張ろうという気持ちにさせてくれます。