評価:★★★★☆ 3.7
僕は小学生だけど、これでも立派な受験生。
放課後は塾のない日も、一人で図書館で自習するぐらいには真面目な子どもだ。
いつものように勉強していると、視線の先にとても奇妙な男がいた。なんだか知らないが、楽しそうにしている。日々忙しくしていると忘れがちな、瑞々しい少年の気持ちを思い出す短編小説。
(この小説はカクヨムにも掲載しています)
話数:全6話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
受験を控えた小学生の身に起こる、少しだけ非日常だけど現実にありえる出来事。それも、フィクション的なドラマチックなものではない。けれど少年の心に確かに残る、いい塩梅の展開だと思う。そんな出来事を、勉強熱心で知識は豊富でありつつ世の中に知らないことがまだたくさんあるという少年の目から表現する。そのキャラクター性と見えている世界を見事に表現している文章が見事だった。ちょっとむずかしい言葉を使いつつ、でも彼には理解できない事は確実にある。この時期の子供にしかない感性で、その表現力と共に懐かしさなんかも感じた。出来事は、傍から見れば幸せなものではないのだろう。けれどそれに起因してなにが起こるか。爽やかな余韻が感じられる小説だった。
覚くんの一人称形式で物語は進行していきます。受験を考えている覚くんらしく、「厭悪」や「馴致」、「吃驚」といった難しい言葉をどんどん使っていきます。確かにこの時分は覚えたての難しい言葉をすぐに使いたくなり、なんともむず痒い思い出を呼び起こされる形となりました。その辺り、作者さまの細かい作り込みがされていてとても好感の持てる作品です。短い作品ですので、サクッと読むができます。ぜひ、ご一読ください。
メインのステージとなる図書館の雰囲気を本で描いたのは見事でした。古びた図書館の雰囲気をものすごく綺麗に表せている上にしつこさもない。お手本のような描写でした。僕もこういう風に綺麗な背景描写をやれるようになりたいですね。ストーリーも謎の男の言葉とか友達の人間性など小学生らしさも感じられるお話でした。もし作者さんにそのつもりがあるのであれば是非数年後のお話が見てみたいですね。謎の男がどうしてあの本を読んでいたのか……。そういったバックストーリーが是非見てみたいですね。