評価:★★★★☆ 4.2
1920年代末の日本帝国、光和五年の春を迎えた帝都・東京。ドイツ人の母を持つ美貌の青年・千崎理人(せんざきまさと)は帝大卒のエリートながらも、家も金も職も持たぬ自堕落な生活を送っていた。ある日、居候先から追い出されそうになった理人は、職を探すため知人のサロンを訪れる。そこで出会ったのは、眠れる一人の子供――謎めいた雰囲気の『小野カホル』との出会いにより、理人は様々な事件に関わることになり……。
大正~昭和初期の架空日本。帝都・東京を舞台に、童話をモチーフにした事件を解決する、自堕落な美青年と謎めいた少年のミステリー短編連作集。
話数:全77話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
その他要素

この作品は、童話をモチーフにした事件を自堕落な美青年と謎めいた少年のコンビが解決するミステリーとなっております。とはいえ必ずしも筋書き通りにはいかず、時にはあっと言わせる展開もあり思わず舌を巻きました。かくいう私も、時間を忘れて読み耽っていたくらいです(笑)そして何より個人的に推したいのは、洗練されたその文章力です!舞台は1920年代末の日本なのですが、その時代に生きる人々の生活が目に浮かぶようでした。加えて登場人物の心理描写やちょっとした仕草を表すのが上手く、『キャラクター』ではなく『人間』が作中で動いている様は感服いたしました。また一つ一つの事件自体は一話ごとに綺麗にまとまっており、目標が明確なため読みやすいかとも思います。たださりげなく伏線等もありますので、読む際は三十分ほど時間を確保してから一話を一気に読まれた方がいいかもしれませんね。
普段は京極先生の百鬼夜行シリーズが好きで読んでいるのですが、こちらもなんだか大正ロマンというか、レトロな世界観がたまりません。主人公とカホル君のコンビはいつまでも眺めていたいですし、もしかしたら完結が近いのかもしれませんが、この先も活躍してほしい気持ちでいっぱいです。全力で応援しておりますので、末永くよろしくお願いします。あと、でかい男の筈の一谷が可愛くて好きです(笑)