評価:★★★★☆ 3.9
自然に囲まれた海沿いの小さな田舎町、八百。ここに住む中学生の少年、セイヤはいじめられっ子で学校で居場所を失っていた。そんなセイヤの前に現れた同級生の少女、スズミ。出会ったときはただの同級生としか思っていなかったふたり。しかし、すでに運命の歯車は夏に向けて動き始めていたのだ。
○MKコン最終選考作品
○この作品はノベルデイズ、カクヨム(2019年5月より)でも連載しています。
○誤字報告追加しました。(2018/11/28追記)
○通算話数を前書きに設置し、著作権表記を移動しました。(2018/11/28追記)
◯各話にサブタイトルを付け、一部加筆修正しました。(2019/12/31追記)
◯完結しました! ありがとうございました!©️ひろ法師・いろは日誌2018
話数:全35話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
“出会い”というのは、得てして妙な奇跡をもたらすものである。人によっては時に人生を左右するような、大きな意味合いを持つこともある。本作の主人公であるイジメられっ子のセイヤと、ヒロインであるスズミは正にそれに該当した。とある田舎町を舞台に、テンポの良い文調で物語は展開されていく。そしてこれは作者自身の手腕によるものだと思うが、文章を目で追っていくうちに爽やかな夏の情景が頭の中に呼び起こされる。実に清々しい思いに浸れるに違いない。次に、主人公のセイヤとヒロインのスズミだが、この二人のコントラストがまた作品全体に良い味をもたらしている。一見出会わなさそうな、境遇の違う二人に思えるかもしれないが、だからこその化学反応というのもあるのだろう。そこに誇張され過ぎないファンタジー要素も相まって、作品の面白みは一層昇華する。魅惑的な香りを放つ『夏』の宝石箱。その箱を開けるのはーーあなただ。
いじめにより、学校に居場所がない少年虐待により、家に居場所がない少女少年にとって、図書室は唯一の安らぎの場であった少女にとって、図書室は唯一の知識を得る場であったその出会いは必然であり、少年の血が特別であったことは運命だろう彼は人魚を祀る神社の一族で、少女は人魚の伝承を求めていた――自由研究で済むはずだった――×××により、××に居場所がない女彼女こそ、最初にして最後のピース――時を越え、伝承を動かす歯車が回り出す――少年と少女の日常は変化した。互いに寄り添うことで、特別な居場所が生まれた2人は知らずに踏み出してしまった。その場所は、非日常に通じていた少年にとって、伝承は冒険である少女にとって、伝承は願いであるそして……女にとって、伝承は現実であった【田舎町を舞台に大冒険の始まりだ】友情、正義、恋の片鱗。濃厚な物語が、君を待っているぞ!
恋愛小説。ネット小説というよりはそんな言葉が似合う気がする。この物語はとにかく他のどの作品にも見られない小説感がある。決してライトノベルではない。 物語はイジメを受ける主人公セイヤが友達に恵まれた清楚な少女スズミと図書館で出会うことから始まる。そして2人の関係は郷土史という他の恋愛作品では絶対に主題にはされないものを中心に動き出す。 一つ一つの描写が他にはない丁寧さが美しき良き田舎の舞台を読者の頭に再建させて、その世界に誘ってくれます。そして読み進めるうちに心のどこかが不思議と懐かしい感覚に包まれてきます。 現代社会の荒波に飲まれ疲弊するそこのあなたに勧めたい一作。一度心を優しく休ませてみてはいかがでしょうか。
海に面した自然が豊かで……つまらない街。この街は、内気な少年に逃げ場を与えてはくれない。外で遊ぶのが当たり前の中にあって彼には居場所がない。教室の前で立ち尽くす≪戸の前で足がすくんでしまう。背負ってきた鉛が、いよいよ僕を押しつぶそうとする≫八百(じもと)の『郷土史』なんて盛り上がりようのない要素をキッカケにモノクロ染みた少年の心に鮮やかな色がひとつ、またひとつと灯っていく。夏のある日、少年と少女は『神社』の資料庫の鍵を開ける。整然と並ぶ書物に思わず読み手もワクワクさせられることだろう。あと『箱』いじめの描写は結構エグい方。それでも必要な描写だと感じたのは「その現実があるからこそ」主人公であるセイヤを取り巻く世界観がキレイな輪郭を魅せてくれている。と素直に思ったから。
クラスメイトから理不尽ないじめを受ける中学生、セイヤの校内唯一の居場所は図書室。そこで彼は、図書委員兼バレー部の美少女、スズミと出会う。人魚伝説について調べているという彼女との邂逅により、セイヤの日常は、物語は、徐々に突き動かされていくーー。 セイヤとスズミ、二つの視点で綴られていくグッバイ、マイサマー。とにかく描写が丁寧で、自然と物語に引き込まれていきます。舞台設定の作り込みも目を見張るものあり。 田舎の夏の香りが時折、鼻先を掠める今作。ぜひぜひ読んでみて下さい。 平成最後の夏は、まだまだ終わらない。
物語は二人の主役を軸に進められる。一人は暖かな家庭を持ちつつ学校ではイジメられる少年。もう一人は多くの友達を持ちながら、何処か切羽詰まった印象を与える少女。そんな二人が出会った時から物語の歯車は回り出す。 郷土に伝わる伝承を追う少女は秘めた理由を明かさない。一方少年もイジメを理由に、そんな少女に心を開かない。思春期の戸口に立った少年少女の淡い関係性がどう発展していくのか? 夫々の抱える問題をどう克服して行くか? その過程こそが本作品の主題だろうと思う。 本作文章は夏の情景を瑞々しく描写し、まるで眩しい日光と蝉の鳴き声さもが聞こえそうな臨場感を持っている。その一方で使われる言葉や表現は至って分かり易いものである。読者の皆様は数話読み進める内に、いつかの夏休みを追体験する感覚を持つだろう。夏の終わりにはピッタリの作品だといえる。