評価:★★★★☆ 3.9
俺は『天才』を嫌悪する。
11歳の時、自分が「凡人である」と明確に理解した。
きっかけとなったのは、クラスに転校してきた白月蒼子という一人の少女。
彼女が持つ類まれなる才能を目の当たりにした俺は、生まれて初めて『天才』を実感した。
それと同時に、自分は決して『天才』にはなれない。一生凡人のままであるということを理解してしまった。そんな『天才』を目の当たりにした俺にあったのは、感嘆でも驚愕でも羨望でもなく、
——『嫌悪』だった。
そして、彼女はそんな『天才』に対して強い嫌悪感を抱くようになった俺に、わけもなく付き纏うようになった。
あれから6年。
高校2年生になった俺は未だに彼女に付き纏われていた。
「ねぇ——」
「うるせぇ。話かけんじゃねぇ。天才が感染る」
これは『天才』を嫌悪する凡人と、『凡人』に憧れる天才の物語。
話数:全187話
ジャンル:ラブコメ
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
世の中には多くの天才がいて、凡人は比較できないほどにたくさんいる。私は、存在も知られていないような凡人の内の1人です。白月のような天才を見ると、「命の価値は平等ではない」と感じます。皇もまた、自身を凡人と評する人間です。しかし彼は、差を理解しながらも追い抜こうと努力します。それは決して、憧れなんて動機ではありません。皇は嫌悪しながら、白月の隣に居続けるのです。気になる理由や心情は、是非とも本編で読み取ってください。
この作品のヒロインである白月蒼子は、天才である。天才というキャラクターは数多く創作では存在するが、彼女はそんな彼らと少し異なる。彼女の精神性は、年相応に未熟なのだ。まだ自分の未来も、やりたいことも決まってない子供が周りの期待に健気に、心を擦り切らせながら答えている。そんな時、彼女が主人公である皇に、唯一の救いを感じるところから話ははじまる。あえて言わせてもらうと、この物語は痛烈な作品だ。私のように、多感な時期にあらゆることから逃げてきた人は、心臓を刺すような痛みを味わうだろう。天才と凡人という部分に焦点を当てた作品ではあるが、彼ら彼女らの苦悩は在りし日の自分たちに重なる部分が多くあるだろう。だからこそ、私はこの作品を、青春をサボってしまった大人たちに見てほしいと思った。かつて諦めて、目をそらして逃げたことに、もう一度向き合える作品だ。