『心理・医学的未来予測検査』。
それは、高度に発達した人工知能(AI)テクノロジーによって、被験者の未来が正確に予測できる検査のこと――。検査項目は『余命』『未来の犯罪歴』『未来の性格』さらに『未来で成就する恋愛の回数』までと多岐に渡り、まさに人間が作り出した神の預言だ。
そのため人々からは『死神チェック』と呼ばれていた。
そして、日本では高校二年生の夏休み前にこの検査を受けて、今後の進路相談に活用されるのが通例だ。物語の主人公、滝田順平は高校二年生の男子。
どこにでもありそうな普通の家庭環境で育った彼もまた、夏休み前日に『死神チェック』を受けた。
しかしその結果は残酷なものだった。『余命3年』
『未来に恋愛成就する回数は0回』生きることに絶望した彼は、学校にも行かず、家に引きこもったまま出てこなくなってしまう。
見かねた彼の父親のすすめで彼は『ヤングホスピス』という施設に入所することになった。
『ヤングホスピス』は、彼と同じように余命宣告を受けた若者たちが、自分らしく穏やかに暮らせるように建てられた施設のことだ。ところがヤングホスピスで暮らすことになったからといって、彼が絶望の淵から抜け出せたわけではなかった。
そんな彼がホスピスで出会ったのは、彼と全く同じく余命わずかで、未来に恋愛成就する回数は0回と宣告を受けた少女、メイ。
天真爛漫で何事にも前向きな彼女は、いつも後ろ向きな順平とは正反対の性格だ。
ある日、メイは順平に言った。「死神チェックを作ったのは人。だったらそのチェックの結果をくつがえせるのも人だよ」
驚き、言葉を失う順平に対し、彼女は驚くべきことを告げてきたのだった。
「ねえ、ジュンペイ。恋をしよ。恋をして自分たちの手で未来を作ろう」
この一言から順平とメイの運命は動き出す――。
※他の小説投稿サイトでも掲載中です
※2019年3月4日より投稿開始し、完結まで毎日23時に最新話を更新いたします
※完結まで予約投稿済みです
- 未登録
- 未登録
被験者の未来が正確に予測できる検査がある世界の物語です。現代のAIブームにおいて、このような事が現実のものになりつつあるのではないかと思います。 予想された『余命』『未来で成就する恋愛の回数』の運命にあがなう、切なくも勇気づけられる内容となっております。 本作品の書き手様は「自分が勇気づけられたり、感動できる物語を作ることが、私の創作の基本」とおっしゃられる方で、私も勇気づけられました。 自分の限界なんて決まっていると考えられている方に是非読んで頂きたい作品です。 登場人物が前向きに運命に立ち向かっていく姿を是非読んでいって頂きたいと思い、レビューを書かせていただきました。 私はこの作品がとても好きです。
個人の寿命・そして寿命までの恋愛成就の回数を判定できるようになった世界。短い余命と恋愛が一度も成就しないまま死ぬと宣告された主人公が、療養先の島で同じ余命と恋愛成就しない運命を宣告されたヒロインと出会う恋愛小説。この作品のポイントは、死に向かう彼女達の賢明さにある。涙もあり、別れもあるが、彼ら彼女らはやがてくる命の終わりへ前向きに立ち向かっていく。その中で示されるものは、死に対する態度である以上に、定められた寿命や運命との戦いであり、軽快な描写ながらも懸命に生きる彼らの在り方には響くものがある。