評価:★★★★☆ 3.9
とある1人の歌姫が、世界中の音楽シーンを席巻した2020年、春。
ミュージシャンを志す少年・奏介は、満開の桜の下で見知らぬ少女と出会う。
彼女の名は、遠野彼方。
運命的に出会った2人は春を越え、一生忘れられない夏を駆け抜ける。千葉県柏市から始まる青春の四重奏、開幕——
2019/05/14 完結
話数:全176話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
完結日:2019年5月15日
作者:染島ユースケ
プロットや世界観の作り込みが感じられます。プロを目指す方は是非、参考のためにも読んでみてほしい。また言葉選びも専門用語ばかりや小難しい書き方ではなく、ちゃんと作者様の中で咀嚼してから書かれていると思います。なのでとても読みやすく、登場人物の状況も掴みやすいです。またシナリオの展開として、読者を引き込むような構成がなされています。あまり深くは書けませんが、一つの読み物として、スリリングさ、意外性も兼ね揃えています。なのでこれから読み始める方は、作品に対してしっかり期待し、読み進めていってほしいと個人的に思いました。
作品の魅力は多々あります。 プロミュージシャンを目指す高校生の主人公ほか、躍動感ある魅力的なキャラクター。 現代モノですが、「現在の世界」とは微妙にズレていく、緻密に構築された第二の世界観。 歌姫「MiX」という不気味なアイコンの存在。 千葉県柏市と北海道乙江町を舞台にした、鮮やかでリアリティあふれる情景描写。 “音楽”を中心としたすがすがしい青春群像劇。かつ純粋無垢なラブストーリー。 しかし、それだけでは語りきれないのが、最大の魅力。 なにせ『ワールズエンドの歌姫』ですからね。
これは流行という強大な敵に噛み付く、レジスタンスの物語だ。時は2020年。世界中の音楽業界はとあるアーティストが席巻していた。その名は『Mix』。この世界で絶大な人気を誇っており、誰も彼もがMixに憧れ、虜になり、真似をする。しかし、そんなMix一色の音楽界に辟易している者達がポツリ──この物語の主役達、この青春を奏でる者達だ。主人公達は「音楽を殺した」とMixを非難し、超えようと日々軽音部で活動し続けている。ただ、彼らはプロでもなんでもない。それは世迷言と呼んで然るべきものだった──しかし、ある少女との出会いで運命は動き始める。山あり谷ありな彼らの物語は何処までも青春で、不恰好で、美しい。思わず夢中になってしまう。是非、彼らの物語にスポットライトを当ててみてくれ。個性的なメンバー達が奏でる音楽と物語は、何処までも声高々に読者と言う名の天へと響き渡るだろう。
キャラクター、1人の感情や行動がとても丁寧で繊細でとてもわかりやすく描かれていて、ページをどんどんめくりたくなります。音楽をメインにした小説なのですが1人の少女が少年に対して厳しい言葉を言ってしまうのですが、少年は、そんな少女にひたむきに向き合い、自分達なりの音楽を届けました。そこにぐっと来てしまいました。あっもう青春ってやっぱりいいなぁ!!懐かしくも少し切ない、音楽をメインにした青春群像劇そこの貴方も読んでみませんか?
日常の描き方が凄くいい。ワクワクさせてくれる。とても綺麗な青春なようでいて、実はそんなに特別なモノではない友人たちとのやりとり、物語のそこかしこから滲み出てくるような音楽と歌。≪「遊び半分の音楽をやっているやつは嫌い」≫少女の言葉に打ちのめされる主人公も、それを聞いて感情的になる梨音も、ケロリとしながら答えるジェロム(アフロ)のキャラクター性も素晴らしく光って見えるから不思議。≪「準備しろ。今からここはライブハウスだ」≫熱っ! なにこれ超青春してるっ! こんなモン心が躍るわっ! ドキドキしてしまう!そして、とても残念なことに本作は読者を休ませてくれはしない。大きな盛り上がりを魅せてくれる演奏パートの山場を越えても『日常の描き方が凄くいい』のでページをめくる手が、やめられない止まらない。できることならもう一度……あああああああああ青春だなぁコンチクショウ!!
この作品を読んで、私はまるで音楽を読んでいるような気持ちにさせられました!奏でるように胸に通る登場人物達のやりとり……そのバックから聞こえる情景……そして、そのリズムの良さ……さらに……読めば読むほどに、その中に溢れた心情を聞くことができ、新鮮な発見をさせてくれます!是非、ご一読して、読める音楽のような世界観を感じてみてください!
多くの場合、ひとは妥協します。こんなもんでいいかって。ひとは諦めます。努力なんかしたって無駄なんだって。どんなに手を伸ばしたって、どうせ星には届かない。身の丈を知ること、それが大人になることだって。だからこそ、この物語に登場するキャラクターたちが眩しく輝きます。彼らはいつだって全力で走り、全力で悩み、そして全力で音楽を遊んでいるから。たぶんね。それは一時的なこと。何十年先までもは続けられない。けど、それで良い。いまを全力で走り抜けよう。瑞々しい筆致と等身大のスタンスで描かれた、音楽に賭ける青春群像劇です。あなたの好きな歌は、なんですか?
今時の流行の音楽について、という議題について誰しも一度は議論を交わした事があると思います。ああいうのが好き、こういうのは飽きた、そういうの苦手。無論答えは十人十色。時に衝突や食い違いを生むくらいのエネルギー源になる。この物語の主人公 多田奏介やその周囲も同じ。好む音楽、嫌う音楽、真っ直ぐな持論と感性を包み隠さない。『好きと嫌いとの間を取って、大人な答えを出す』そんな体の良さを取っ払った、自分のスタイル剥き出しなキャラクター達のやり取りは、良い面でも悪い面でも『高校生』らしさが浮き彫りになってます。不器用ながらも若く実直なやり取りは非常にリアリティがあり、それを今の音楽シーンに対する風刺とせず、しっかりと『青春物語』として昇華できている数少ない作品と言えます。この作品を楽しむのに、ヘッドホンはいりません。目で楽しみ、心で聴く青春ロックをどうぞお楽しみ下さい!